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華やかな香り、美しい雫の音色 「袋吊り」で搾るぜいたくなお酒

 「明日の朝、大吟醸を搾ります」。そんなメッセージが届いたのは、今から1カ月ほど前のことだった。メッセージの送り主は、銘酒「萬年雪」で知られる森田酒造(倉敷市本町)の秋山洋祐杜氏(とうじ)。なんでも全国の酒蔵が最高の原料、最高の技術をかけて競い合う「全国新酒鑑評会」出品用の貴重なお酒を「袋吊(づ)り」という特別な方法で搾るという。筆者は迷うことなく「行きます!」と返信。翌朝、やや緊張しながら酒蔵にお邪魔した。

 ここでいう「お酒を搾る」とは、酵母を純粋に培養した「酒母」と呼ばれるものに米、麹(こうじ)、水を加えて発酵させた醪(もろみ)を清酒と酒粕に分離する工程を指す。酒造業界ではこれを「上槽(じょうそう)」という。その方法はさまざまだが、近年は大型のアコーディオンのような形をした搾り機を使う方法が主流だ。中には舟の形をした槽に醪を入れた酒袋を丁寧に並べて積み重ね、上から圧力をかける「槽(ふね/ふな)搾り」を採用している蔵もあるが、岡山県内では前述の森田酒造や「武蔵の里」「宙狐(ちゅうこ)」などで知られる田中酒造場(美作市古町)など一部の酒蔵を残すのみ。高級酒を中心とした特別なお酒にだけこの方法を取り入れている酒蔵もある。

 一方、ごくわずかな量しか取れないぜいたくな搾り方のひとつに、冒頭で紹介した「袋吊り」がある。主に品評会への出品酒や最高級クラスの酒を搾る際に採用される手法で、...
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(2024年03月18日 18時00分 更新)

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