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倉敷「ブラタモリ」こぼれ話(上)

 “街歩きの達人”タモリさんがブラブラ歩きながら知られざる街の歴史や人々の暮らしに迫る「ブラタモリ」。平成29(2017)年6月に放送した倉敷の回は、当時NHKディレクターだった筆者が担当した。「ブラタモリ」は当初、タモリさんが毎日司会を務めていた「笑っていいとも」の生放送後でないと撮影できないということで、東京近辺だけが舞台だった。平成27年に番組がなくなり、地方にも出張できるようになった時、なんとか岡山県を舞台にできないかと提案した。努力の甲斐あって企画が通り、郷土にタモリさんを呼べることになって、筆者は勇んで取材に精を出していた。

 倉敷を舞台にした以上、<江戸時代の豪商と、近代の繊維工業の富とで形成された町並みが戦後の美観地区の概念で残る>というおおまかな方向性を提案し、本部の事務局から了承された。しかしそれをタモリさんに興味を持ってもらう形でどのように提示するかはディレクターの腕の見せどころである。とりわけ筆者が頭を使ったのは、<倉敷周辺は江戸時代までは海だった>という開発の原点を、どんな「見てわかる物」で示すか、だった。「ブラタモリ」を見ていると、地形や地質の話がいつも出てくる。倉敷には歴史の題材はたくさんあっても自然の題材はあまり思いつかない。自然史博物館の学芸員や、地学を教えていたという元教員など片っ端から訪ねては情報収集をしていた。

 “本通り商店街に、店の中に岩石がある喫茶店がある”と聞いたのは、取材に行き詰まっていたある日のことだった。...
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(2023年12月20日 17時00分 更新)

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