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【記者コラム】火鍋囲んで見えた大会 中国の記者たちと、ざっくばらんに語った

 杭州で中国の記者たちとつついた火鍋=10月1日、杭州(共同=門馬佐和子撮影)
 杭州で中国の記者たちとつついた火鍋=10月1日、杭州(共同=門馬佐和子撮影)
 中国メディアが少しでも選手の話を拾おうと、勢いづいて仕切りが倒れそうになるのを必死に抑えるボランティアたち。日本のラッシュアワーを想起させた=9月30日、杭州(共同=門馬佐和子撮影)
 中国メディアが少しでも選手の話を拾おうと、勢いづいて仕切りが倒れそうになるのを必死に抑えるボランティアたち。日本のラッシュアワーを想起させた=9月30日、杭州(共同=門馬佐和子撮影)
 みんなで囲んだ火鍋。注文は電子メニュー、決済もアプリで。本場のスープはしっかりと辛かった=10月1日、杭州(共同=門馬佐和子撮影)
 みんなで囲んだ火鍋。注文は電子メニュー、決済もアプリで。本場のスープはしっかりと辛かった=10月1日、杭州(共同=門馬佐和子撮影)
 歴史や文化を表現した演出がちりばめられた開会式=9月23日、杭州(共同=小向英孝記者撮影)
 歴史や文化を表現した演出がちりばめられた開会式=9月23日、杭州(共同=小向英孝記者撮影)
 【杭州】ひょんなことから、杭州アジア大会の取材を通じて仲良くなった中国メディアの記者たちと、食事に行く機会に恵まれた。秋の香りが漂い始めた杭州で、火鍋をつつきながら交わしたざっくばらんな雑談から、この大会のリアルと中国の現在地が見えたような気がした。(共同通信・門馬佐和子)

 7月、福岡で開かれた水泳の世界選手権大会で知り合った通信社の若手記者Aと、杭州の水泳会場で再会した。さらに、競泳日本選手の囲み取材に加わっていた別の通信社の40代女性記者Bとめいめいが仲良くなった。

 連日中国メディアにもみくちゃにされている私をかわいそうに思ってくれたのか、おいしいご飯でもてなしたい、という運びになった。

 だが、肝心の(?)私の予定が立たない。というのも、各日の日本勢の活躍によって、次の日のわれわれ記者の配置予定が変わっていくからだ。

 「明日何時が空いている」とは即答しにくい状態が続いた。また現場では逐一、相互の状況把握の連絡が求められる。

 この管理体制に、Aの知り合いで会に加わったある機関紙の記者Cに「まるで中国だ」と言われ、返答の正解がわからずつい笑い飛ばしてしまった。

 すったもんだの末、おのおのが折り合いを付けて火鍋ランチすることになった。というのも、ここ杭州は開発まっただ中。北京から出張で来た3人に「おいしいご飯があるという認識はない」ため、上海式の火鍋に落ち着いた。

 中国では24時間空いているお店が多いのだそうで、Aが「日本でいうところのセブン―イレブン」と言った。

 鍋のつけだれは「たれバー」でセルフで作るのだといい、Bはみそダレにパクチーをどさどさ入れながら「北京にはもっとおいしい鍋がある」とぶつぶつ言っていた。

 2次会、3次会…とつなげていく文化はあまりないのだという。女性が飲むことも少ないのだそうだ。

 日本はどうだと聞かれ、私は一人で夜な夜な飲み歩いているんだよね。……とは言えず、「女性でも夜飲む人はちらほらいるかな」と答えるにとどめた。

 羊肉(が1番人気らしい)や牛肉を一通り頼んだら、トーク開始だ。イケメン・美女の基準(中国では背が高いのが必須)、中国の世代間ギャップ(Bいわく、AやCら若い男性はおとなしすぎる)とのことだった。

 

 最終的にはやはり現在取材する大会に話は及んだ。中国メディアに他国メディアがけおされている現状や、あからさまに日本を応援しない現地の観客の雰囲気はさておき、3人は「大会は非常にスムーズに進んでいるのでは」と共通の見解を示してくれた。

 北京など遠方から観戦に来た人も多かったようで、杭州以外でも盛り上がっただそうだ。各試合の中継は、専用のスポーツ局一局のみ。チケットは取りづらくなったそうだ。

 興味深かったのは、Bが語った「中国にとってアジア大会は特別である」という話。1990年、北京で開催された第11会大会当時、中国はまだ発展途上だった。そんな中での、初めての大規模な国際スポーツ大会だったのだという。

 当時の最大の関心時は、中国選手団がいかにメダルを獲得できるか。盛り上がりも大きく「大会テーマ曲は授業で必ず歌わされたのよ」とBが言い、Aも「自分も歌える」とうなずいた。そして国力をアピールする場として、アジア大会の重要性が認識された。

 約30年の時を経て、現在はメダル獲得は当たり前。選手の嗜好などこぼれ話や、海外選手の話題がニュースとして一番求められているという。

 なるほど。だから白血病から復活した、競泳の池江璃花子が中国メディアにも追いかけられていたのだと合点がいった。ちなみに人気の大きな理由は「かわいい。清潔感がある」(C)

 Aは「開会式にも感動があった」と海老をゆでながら語り始めた。開会式は中国最新のデジタル技術を駆使しながら、中国古来の文化や舞踊がちりばめられた。

 「いまだ欧米や日本など、先進国のものを良い、とする人が多い。でもここ数年は中国にも良いものあるんじゃないかという考えが出てきている。中国のソフトパワーをアピールできたんじゃないかな」。

 唐辛子で辛いスープから喉を癒やそうというのか、午後も仕事があるというのにビールまで頼みだした。

 国の発展や歩みが、スポーツ大会にストレートに反映されてきた中国。次のアジア大会は日本、愛知・名古屋での開催となる。海外では東京五輪の次、という認識をされる大会になるだろう。

 日本はそこで、どういったアピールができるのだろうか。「次は名古屋で私がごちそうする」と誓った後、こうした思いにふけらずにはいられなかった。

(2023年10月11日 06時53分 更新)

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