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昭和の日

 「さーすが昭和一桁! 仕事熱心だこと」。ルパンが銭形警部をからかうくだりが映画「カリオストロの城」にある。封切りは警部働き盛りの1979(昭和54)年▼一桁世代といえば、今年90~98歳になる人たちだ。世界恐慌下に生まれ、戦時体制に育った。戦後はしゃにむに働いて高度成長期を支えた。先の銭形評は、タフな頑固おやじといった意味だろう▼きょうは「昭和の日」。祝日法で「激動の日々を経て、復興を遂げた昭和の時代を顧み、国の将来に思いをいたす」日と定められる。歴史的教訓を酌み取って平和国家としてのあり方を考える機会に、という▼今の日本はどのような年月の上に築かれたのか。どんな姿を目指すのか。捉え方はさまざまにあり、最近も広島市長が職員研修で教育勅語を使ったり、陸上自衛隊が「大東亜戦争」という言葉を用いたりして論議が起きた▼改元100年を迎える再来年には記念式典を開くよう、政府に働きかける自民党の議員連盟も誕生している。時を経たからこその丁寧で多角的な検証や議論を期待したいが、さて▼「昭和史」シリーズの作家、故半藤一利さんは、人々の証言と史料を積み重ねる手法で歴史を掘り下げた。まずは先入観を持たずに学ぶ。そこからしか教訓は決して得られない―。「一桁」が貫いた信念をいま一度かみ締める。

(2024年04月29日 08時00分 更新)

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