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ドライブインの魅力

 駄菓子屋、古本屋、銭湯…。どことなく昭和の薫りが漂う場所である。ここにドライブインを加えても異論はあるまい。1960~70年代、マイカーの普及を背景に全国の国道沿いに続々と誕生した▼米国発祥とされ、一般的に広い駐車場を備えて食事や休憩ができる民間の施設を指す。帰省の家族や旅行者、トラック運転手らが立ち寄る▼高速道路の建設が進み、国道の通行量が減ると衰退していった。90年代には道の駅が登場。ファミレスやコンビニの普及にも押された一方、「昭和レトロ」が感じられるとして若者には目新しく映る▼東京五輪が開かれた64年に開業したのが瀬戸内市の「おさふねサービスエリア」である。全国2番目のドライブインとされ、60年にわたり親しまれた。大型連休最終日の5月6日をもっていったん営業を終え、建て替え工事に入る▼国道2号沿い、吉井川左岸の赤い三角屋根がシンボルだ。屋上に出ると、高速で通過する新幹線を間近に眺められ、鉄道ファンや子どもたちが迫力に感動する。営業再開は2026年の予定。三角屋根は何らかの形で残したいという▼地域に深く根を下ろすドライブインは地元企業や個人の経営が多く、食事のメニューや内外装に店主の思いが強く反映される。画一的でない自由さが魅力でもあろう。未来に残したい場所である。

(2024年04月16日 08時00分 更新)

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