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「裏金」機に特別委 真相の解明が欠かせない

 再発防止の有効な対策を講じるためにも真相の解明が不可欠である。

 自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件を受け、衆院はきのう政治改革特別委員会を設置した。参院もきょう設ける。政治資金規正法の改正が主な議題となるが、事件の真相は依然闇の中であり、このまま幕引きとすることは許されない。

 政治資金収支報告書への不記載が、党を除名された議員らを除いても5年間で85人、総額約5億7949万円に上った事件である。派閥という組織を挙げ、規正法に背く行為だったことは明白だ。裏金づくりはいつ、誰が、何のために始めたのか。裏金を何に使っていたのか。全容を明らかにしなければならない。

 現行の規正法は、収支報告書の不記載などに会計責任者の罪を定めるだけで、政治家の共謀を立証するのが難しいとされる。過去の規正法違反事件の多くも立件されたのは秘書ら事務方だ。

 今回の事件の主な舞台となった安倍派でも会計責任者が在宅起訴されたが、派閥幹部は立件されなかった。不記載を組織的に行っていたにもかかわらず、幹部たちは衆参両院の政治倫理審査会などで「知らぬ存ぜぬ」と繰り返した。国民感情としては納得し難いだろう。

 規正法改正で論点の一つとみられるのが、政治団体の代表者である議員らも連帯責任を負う「連座制」の導入だ。会計責任者に対する政治家の監督責任を問うことになる。

 そもそも多額の政治資金の扱いを会計責任者の一存で全て決めるのは無理があろう。真相の解明を通じ、政治家の関与の有無が分かれば、連座制導入の適否を判断する材料にもなるはずだ。

 裏金事件をきっかけに、自民の茂木敏充幹事長らの資金管理団体が、使途公開基準の緩い自身の後援会組織(政治団体)に多額の資金を移動させていたことも分かった。こうした資金移動は違法ではないが、支出の具体的な内容が分からなくなり、結果的に政治資金の透明性が欠如してしまう。見直しが必要であり、そのための実態の解明が求められる。

 政治活動が国民の不断の監視と批判の下に行われるようにする―。規正法に定められた同法の目的だ。事件の真相を明らかにし、政治不信を払拭することは、規正法の趣旨にも合致すると言えよう。

 規正法は長年「ザル法」と呼ばれてきた。抜け穴を徹底的にふさがなければならない。例えば企業・団体からの政治献金は、癒着の温床になるとして政治家個人の資金管理団体に対しては禁止されているが、同じ政治家が支部長を務める政党支部には党本部と同様に可能となっている。

 こうした問題点を一つ一つ点検すべきである。自民は今国会中の法改正を掲げるが、日程ありきではなく、熟議を尽くさねばならない。

(2024年04月12日 08時00分 更新)

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