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規正法の見直し 自民案から本気度見えぬ

 地に落ちた国民の信頼を回復するには「ザル法」と指摘される政治資金規正法の抜け道を完全にふさがなければならない。

 自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件を受けた規正法改正の議論がきのう、衆院政治改革特別委員会で始まった。政治不信を払拭するための真摯(しんし)な議論を与野党双方に求めたい。

 初日の特別委では七つの党・会派が意見表明した。「今後は政治家に二度と言い逃れをさせない」(自民党)、「徹底した真相究明と責任追及を求めていく」(立憲民主党)などの決意が聞かれた。有言実行できるかが問われる。

 論点の一つは「連座制」の導入だ。連座制は公選法にあり、立候補者が選挙違反に関わっていなくても出納責任者らの刑が確定すると、当選無効となり、同一選挙区での立候補が5年間禁止される。公明党と野党は早くから、議員が連帯責任を負う同様の仕組みが必要だと主張していた。

 自民も特別委で「いわゆる連座制の導入が必要だ」と強調した。先に公表した規正法改正の独自案でも、政治資金収支報告書の提出時に議員による「確認書」添付を義務付け、罰則規定も設けることで会計責任者に対する政治家の監督責任を強化するとした。

 罰則適用には、会計責任者が収支報告書への不記載・虚偽記入で処罰されたことと、議員が内容を十分に確認せず確認書を交付したことの2点を要件としている。だが、今回の事件で不記載のあった議員は80人を超えていたが、立件された秘書らは1桁にとどまった。適用のハードルは高いと言わざるを得ない。「確認」を十分しなかったことをどう判断するのか、基準も曖昧だ。野党が「連座もどき」と指摘するのも当然である。

 裏金づくりに利用された政治資金パーティーの在り方も見直しが必要だ。立民は全面禁止を求め、与党である公明はパーティー券購入者の公開基準を購入額「20万円超」から「5万円超」に引き下げるよう提案している。

 一方、自民は今後の検討項目にとどめている。独自案でパーティー収入の透明性などを挙げたが、具体策は何も打ち出していない。

 法改正の動きは、自民党派閥で起きた裏金事件がきっかけだ。自民は当事者意識を持ち、再発防止に努めなければならない立場である。にもかかわらず、生ぬるい改革案では本気度が伝わってこない。

 野党は、政策をゆがめる要因になりかねないと指摘されてきた企業・団体献金や、使途公開の必要がない政策活動費などの見直しも求める。

 自民は、不記載事件の再発防止策ばかりを強調するが、問われているのは「政治とカネ」の関係である。企業・団体献金や政策活動費などの在り方も併せて議論を深めるべきだ。そもそも抜本的な対策を講じるためには事件の真相解明が欠かせない。

(2024年04月27日 08時00分 更新)

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