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熱中症 「特別警戒」対策強めよ

 夏の暑さは年々厳しさを増し「災害級」ともいわれる。今年も既に最高気温30度以上の真夏日を各地で観測。体温の調節機能低下によって起こる熱中症対策を徹底し、健康被害を予防、軽減したい。

 4月に全面施行された改正気候変動適応法に基づき、重大な被害が生じる危険な暑さの際に対策を一段と強めるよう政府が呼びかける「熱中症特別警戒アラート」の運用が始まった。気温や湿度、日差しの強さなどから算出する翌日の「暑さ指数」が、各都道府県内の全ての観測地点で35以上と予想される場合、環境省が前日の午後2時ごろに対象の都道府県を発表する。

 対象地域には最大限の予防行動を促す。一人一人が自分の身を守るだけでなく、高齢者や乳幼児に目配りし、涼しい環境にいるか確認を要請しているのが特徴だ。指数33以上で発表する現行の「警戒アラート」より一段上の位置付けである。本年度は10月23日まで続ける予定だ。

 特別警戒アラートに該当するケースは前例がないとみられるが、地球温暖化に伴い猛暑のリスクが世界規模で高まる中、予断を許さない。発表時には不要不急の外出を避け、イベント主催者や学校長には活動の中止、延期を含めて柔軟な判断が求められよう。住民同士の声かけも大切だ。発表状況は環境省サイトで確認でき、メールで受け取れることを知っておきたい。

 改正法では、公民館や図書館、ショッピングセンターなど冷房が効いた場を「指定暑熱避難施設」(クーリングシェルター)として市区町村が事前に指定する。特別警戒アラート発表時は、一時的に暑さをしのぐ場所として利用すればよい。

 これまでも独自の判断でシェルターを設ける自治体はあったが、広がりは限定的だ。昨年12月時点で設置の実績があったのは139自治体にとどまったことが環境省の全国調査で分かっている。住民への周知期間も考慮し、指定を急いでほしい。

 気象庁によると、昨夏の平均気温は1898年の統計開始以来最高を記録した。5月からの3カ月予報でも、中国地方の平均気温は平年より高くなる見込みという。

 総務省消防庁によると、昨年5月から9月までに9万1千人余りが熱中症で救急搬送された。死者は近年、ほぼ毎年千人を超えている。一方、予防法の実践によってリスクは軽減できる。その一つが、本格的な暑さが始まる前の今の時季からウオーキング、ジョギングといった軽い運動や長めの入浴で体を暑さに慣らしていくことである。無理なく生活に取り入れたい。

 対策の基本は、エアコンの適切な利用と小まめな水分補給であり、気温の高い日には飲み物を持ち歩き、帽子や日傘を使うことが有効だ。首回りを冷やせるネッククーラーなど保冷グッズも場面に応じて活用したい。

(2024年05月06日 08時00分 更新)

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