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コロナ無料接種終了

 昭和の大女優、故・高峰秀子さんが生まれて、きょうで100年になる。これに合わせて、岡山市の映画館でも出演作が上映されている▼ユニークなエッセーも残した。例えば、終戦間もない話。知人の日系の米兵に軍の病院に連れて行かれた。注射は大の苦手だが、おにぎりをごちそうしたお礼に予防注射をプレゼントされたのだ▼「コレラとチフス。ほんとは3回、でもデコさん1回でOK」。デコさんは高峰さんの愛称。3回分の注射をまとめて一度に受けて、高熱を出してひっくり返ったと自著「わたしの渡世日記」にある▼当時の日本では感染症のまん延が大きな問題だった。そこで1948年、予防接種法が制定され腸チフスなど12の病気は義務となり、集団接種も広まった。その結果、患者は減ったものの、副反応への懸念から94年、判断を個人に委ねた▼新型コロナウイルスでは久々に大規模な集団接種も行われた。無料のワクチン接種は今月末で終わり、高齢者らを対象に秋から冬にかけての接種に移る▼終戦当時、政府も、人も、自分たちの進むべき道さえ判別がつかず、右に走り、左に走ったと高峰さんは振り返っている。4年余のコロナ禍でも右往左往した。医療の公費支援など、さまざまな施策で有効だったのは何か。きちんと振り返ることが次の感染症への備えになる。

(2024年03月27日 08時00分 更新)

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