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見直し進む名札

 飲食店でスマートフォンを使ったアンケートに答えた。店の雰囲気や料理の感想を入力し「接客の良かったスタッフの名前」を尋ねられて手が止まった▼数回利用しただけの店なので顔は覚えていても名前までは知らない。胸の名札を確認すると、平仮名で名字を書いていた▼名札の表記を巡る動きが接客業などで急だ。多くがフルネームから名字、イニシャルに切り替え、そもそも着用をやめた店もある。名札から個人情報を検索されたり、SNS(交流サイト)で氏名をさらされたりするのを防ぐ狙いという。客からの不当な要求や行為「カスタマーハラスメント」対策の一環である▼バスやタクシーの車内に乗務員の氏名を掲示する義務は昨年8月に廃止された。薬局で働く薬剤師や登録販売者の名札は、名字のみでも差し支えなくなった▼自治体も見直しに動く。岡山市は昨年10月、職員の名札を名字のみに変更した。窓口で応対した来庁者から「SNSで名前をさらす」と言われた職員の訴えなどがきっかけという▼名札には相手に身分を伝え、仕事に責任を持たせるといった効果がある。客、市民との距離感を縮め、コミュニケーションを円滑にもできよう。一方、SNSの普及で氏名を明かすことがリスクにもなる。良質なサービス提供とプライバシー保護。両立が難しい時代である。

(2024年04月23日 08時00分 更新)

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