山陽新聞デジタル|さんデジ

子どもの権利

 世界中の子どもたちが持つ権利について定めた「子どもの権利条約」が国連総会で採択されたのは1989年。日本では昭和から平成へと元号が改められた年である▼条約の草案を提出したのはポーランドだった。背景には「コルチャック先生」と呼ばれたユダヤ人医師の存在がある。2度の世界大戦のさなか、孤児らのために家庭と学校が一つになった「ホーム」をポーランドで設立。自らを律していけるように、生活の規則などは子どもたちの「自治」に任せ、大人は見守った▼子ども時代から一人の人間として尊重されることなくして、将来を生きることはできない―。コルチャック先生の信念は、後に条約として結実する▼日本は94年に批准し、先月で30年になった。だが、国民の間に浸透したとは言い難い。10~18歳を対象にした日本財団の昨年の調査では、約6割が条約について「聞いたことがない」と答えた▼差別されないこと、何が最も子どもにとってよいかを国や大人は考えること、命を守られて成長できること、意見を表明し参加できること。これらは条約の中で特に大切とされる四つの原則だ▼いまの大人の多くは子どもの権利を知らずに育った。これからの子どもたちにはしっかりと伝えたい。子どもは誰でも自分らしく生きる権利があるのだと。きょうは「こどもの日」。

(2024年05月05日 08時00分 更新)

あなたにおすすめ

ページトップへ