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スマホのアプリ 寡占解消し公正な競争を

 巨大IT企業によるスマートフォン向けアプリ市場の独占を規制する新法案を政府が今国会に提出した。ゲームなどの各種アプリを提供するアプリストアや決済システムの運営について、競合他社に開放するよう義務付けることなどを盛り込んでいる。

 新法案は「スマホ特定ソフトウエア競争促進法案」で、規制対象として米アップルやグーグルを念頭に置く。アプリをスマホにダウンロードする際のアプリストアや、スマホの利用に特に必要な基本ソフト(OS)などは、この2社による寡占状態にある。

 新たな法の整備により、自由競争を促し、アプリの提供価格の低下などにつなげるのが狙いだ。公正な競争環境を実現するための実効性ある仕組みとなるよう、精緻な議論を進めてもらいたい。

 新法案では、例えばアップルのiPhone(アイフォーン)で利用できるのは今は「アップストア」のみだが、他のアプリストアも使えるようになる。複数のストアが参入することで消費者は購入先の選択肢の幅が広がったり、アプリ開発業者が巨大ITに払う手数料が下がったりすることが期待できる。インターネットの検索表示で巨大ITが自社のサービスを優先的に扱うことも禁じる。

 巨大ITに対して禁止・順守事項をあらかじめ定めておく「事前規制」を導入するのが特徴だ。現行の独占禁止法は競争上の問題行為があった際、事後的に対応するが、デジタル分野は技術革新や変化のスピードが速く、対応しきれない面がある。事前規制によって、迅速に対応できる効果が見込まれる。

 違反行為があった場合は、関連する国内売上高の20%分の課徴金を科す。独禁法による従来の課徴金に比べて3倍超となる厳しい罰則を設けることは、規制の実効性を高める上で妥当と言えよう。

 一方、アプリストアなどへの新規参入に伴い、巨大ITが担ってきたセキュリティー機能が弱まるリスクも指摘されている。

 このため新法案は、安全性の確保や青少年保護などの場合は規制の対象外とし、必要な措置を巨大IT側が講じることも認めた。アップルが新規参入のストアを審査することなどが想定される。これに伴い、公正取引委員会は関係行政機関と連携し、ガイドラインを策定する方針だ。安全で安心して利用できる環境を整えることが欠かせない。

 巨大IT規制を巡っては、グーグルやアップルなどに対し自社サービスの優遇を禁じる「デジタル市場法(DMA)」を運用する欧州連合(EU)が先行している。米国でも司法省が3月にアップルを反トラスト法(独占禁止法)違反で提訴し、巨大IT4社全てが米当局による訴訟の対象となった。公正なデジタル市場の実現に向け、これら海外の規制当局と連携を深めることも重要だ。

(2024年05月02日 08時00分 更新)

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