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ジャンプ王道物語 頑張る人後押し 岡山出身・寺坂さん 単行本発売へ

「グリーングリーングリーンズ」1巻の表紙((C)寺坂研人/集英社)
「グリーングリーングリーンズ」1巻の表紙((C)寺坂研人/集英社)
寺坂さんの自画像。顔出しはしていない
寺坂さんの自画像。顔出しはしていない
 夢中になれるものを見つけられずにいた高校生がゴルフをきっかけに熱い青春に―。岡山市出身の漫画家・寺坂研人さん(31)=東京=が週刊少年ジャンプ(集英社)で連載しているゴルフ漫画「グリーングリーングリーンズ」の単行本1巻が5月2日に発売される。「夢に向かって頑張る全ての人の背中を押したい」。仲間と競い合い、成長していくジャンプ漫画の王道と言える正統派スポーツ物語をアピールする。

 高校2年生の珀(はく)は、部活動などに打ち込む友人たちに囲まれ、一人無為な日々を送っていた。そんなある日、人生を懸けて女子プロゴルファーを目指している級友の撫子(なでしこ)と関わり、空虚な日常が変わっていく。ゴルフを巡って思いがぶつかり合い、さわやかな青春物語が繰り広げられる。

 絵柄は繊細だ。競技前の高揚感を瞳の輝きで表現するなど、感情が伝わるように描き込まれた目が特に印象的。バトル漫画と比べて動きは単調だと思われがちだが、スイングのインパクトの瞬間や人間ドラマを丁寧に重ねた上で思いのこもった1打など迫力満点のシーンが並ぶ。「ゴルフの楽しさを伝えたい」。“大人のスポーツ”のイメージが強い点も考慮し、球がクラブに当たらない状態のショット練習に始まり、パター、初めてのコース体験など段階を追って展開され、競技未経験の子どもたちにも分かりやすい。

 幼少から絵を描くこととストーリーの考案が好きだった寺坂さんは15歳で漫画家を志した。“退路を断つ”覚悟で高校を中退し、漫画一筋の生活を開始してこま割りなど下描きとなるネームにジャンル問わず挑み続けた。「絶対、漫画家になれると変な確信を持っていた。今考えると10代の頃の自分は少しおかしかった」と笑うが、その情熱で夢をたぐり寄せた。

 ゴルフを題材に選んだのは、20代半ばで始めた寺坂さん自身が100を切る腕前で純粋に好きだから。「独特の楽しさと奥深さがある。世代を超えてプレーでき、良いプレーを互いにたたえ合う、さわやかな競技です」。2023年11月の連載開始以降、「応援したくなる主人公」「ヒロインもかっこいい」「成長が熱い」といった読者の反響が励みで、一番うれしかった感想は「ゴルフを始めた」。魅力が届いていると手応えを感じている。

 若くして夢へ突き進んだ寺坂さん。「グリーン―」は自らの情熱をぶつける先が見つからない若者たちへのエールでもある。「『冷めている』と言われがちな今の若者も、全力を尽くすに足る何かを見つけたいと思う人は多いはず。主人公がゴルフと出合ったように、やりたいことを見つけたとき、それが自分にとって最速、最高のタイミングだったと考え、一歩を踏み出してほしい」。1巻の冒頭は男子ゴルフの最高峰、マスターズの場面から始まる。夢舞台に向かって主人公がどう歩みを進めていくか興味は尽きない。528円。

 てらさか・けんと 16歳で初投稿し、17歳で担当編集者が付いた。2014年に「週刊少年ジャンプ」が募集した月例の新人漫画賞でトップ賞となり作品の掲載権を獲得。翌15年に落語をテーマにした漫画で誌面デビューした。隔月雑誌への掲載を経て、週刊少年ジャンプでラグビーを題材にした青春漫画「ビーストチルドレン」を19~20年に連載した。

(2024年04月28日 18時42分 更新)

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