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下石井公園の芝生 まちなか活性化に生かせ

 岡山市中心部の下石井公園に天然の芝生を張る市のリニューアル事業が今春完成した=写真。ビルが立ち並ぶまちなかで居心地の良い貴重な空間となり、活性化に結びつくことを期待したい。

 公園は緑豊かな西川緑道公園に隣接し、歩道が広がり歩きやすくなったハレまち通り(旧県庁通り)にも近い。天然芝は2千平方メートルの広さがあり、木陰ができる高木のケヤキ4本を植栽したほか、ロングベンチや園路も設けた。

 立地の良さにもかかわらず、これまでは休憩場所や日陰が少ないなど利用しにくかった面が否めない。子どもを遊ばせるため、わざわざ車に乗って郊外の公園に出かける地元住民も多かったという。都市機能を集約し、まちなかへの定住を促す「コンパクトシティー」「歩いて楽しいまち」を目指す岡山市にとって見過ごせない課題だったといえよう。

 まちなかの公共空間に芝生を設ける意義や効果は、国土交通省がガイドラインで示している。それによると、快適に憩うだけではなく視覚的に映えることから歩いて楽しくなる要素となる。周辺では新規出店の増加なども見込めるとしている。

 公園は長く、面積の拡大に重点が置かれてきたが、人口減少や市街地の衰退が進む中で地域や市民に役立つ活用が求められるようになった。そこで官民が連携して楽しく使い、まちの魅力を高める「パークマネジメント」の導入など、運営の在り方を見直す動きが全国の都市で拡大した。

 成功例とされるのが東京都豊島区の南池袋公園である。区が2016年に芝生広場を整備し、暗いイメージを一新。カフェレストランを誘致し、収益の一部を公園の維持管理に生かす仕組みをつくった。福山市も市中心部の中央公園に官民連携の手法を取り入れ、21年にレストランが開業した。

 下石井公園では、イベント開催などでにぎわい創出を図ってきた経緯がある。芝生化された公園を今後活用していく方法や運営体制はまだ定まっていない。このため市はまず、民間から募ったにぎわいづくりのアイデアを基に来年3月まで実証実験を行う。利用者本位の視点でさまざまな市民、団体の主体的な活動を促していくことが重要だ。

 西川緑道公園やハレまち通りなどと合わせて人を呼び込む魅力を増やし、まちなかの回遊性を高めたい。

(2024年04月19日 08時00分 更新)

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