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ガソリン補助延長 「出口」ますます遠のいた

 今月末が期限となっていたガソリン価格を抑える補助制度が、5月以降も継続されることになった。巨額の財源を必要とし、脱炭素化の流れに逆行するなど、多くの課題が指摘されている政策だ。終了の時期が示されず「出口」はますます遠のいた。

 制度は、新型コロナウイルス禍からの経済回復などを狙いに2022年1月に導入された。当初は2カ月余りの一時的措置とされていた。23年1月以降は補助の上限を段階的に引き下げるなどして出口を探ったが、原油価格の急騰を受けて同9月に一転して補助を拡充。レギュラーガソリンの全国平均価格が1リットル当たり175円程度になるよう、石油元売り会社に補助金を支給している=グラフ

 今月に入り、中東情勢の緊迫化などで原油は昨秋以来の高値を付けている。為替も約34年ぶりの円安水準が続き、高騰しているガソリン価格の収束は見通せない。

 23年1月使用分から導入した電気・ガス代の抑制策については、原燃料となる液化天然ガス(LNG)や石炭の価格が一時より下がったため、5月使用分を最後にいったん終了することにした。今後の価格上昇に備えて支援を再開する余地も残している。

 こうした制度が家計の負担を和らげる効果があったのは確かだ。だが、一時的としていた政策を長期間続けたことで、さまざまな弊害も指摘されている。

 第一の問題は、財政支出が大きく膨らんでいることだ。政府がこれまでにガソリンと電気・ガス代の補助で確保した予算は、総額約10兆円に上る。これは23年度予算の文教・科学振興費や公共事業費を上回り、防衛費に匹敵する規模である。国の借金を増やし、将来世代に負担を強いることになる。いつまでも続けられる政策とは言い難い。

 脱炭素社会を目指す政府の目標と矛盾する点も問題だ。ガソリン価格を安く抑えると、公共交通機関を使ったり、低燃費車に買い換えたりする意欲をそぐことにつながる。脱炭素化に向けた技術開発の妨げにもなりかねない。

 現行制度は富裕層や大手企業を含めて一律に支援している点で、政策としての効率性にも疑問符がつく。家計の支援が目的なら、低所得層に対象を絞って給付金を配る方法もある。再生可能エネルギーの普及や省エネの推進に予算を回せば、化石燃料の価格に左右されにくい社会への弾みにもなろう。政府は長期的な視点を持って政策の転換を図るべきだ。

(2024年04月14日 08時00分 更新)

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