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首相の訪米 国内でも同盟強化説明を

 岸田文雄首相が米国を訪問し、バイデン大統領との会談や、連邦議会上下両院合同会議での演説に臨んだ。

 2015年の安倍晋三元首相以来となる国賓待遇を伴う公式訪米である。裏金事件で政権基盤が揺らぐ首相だけでなく、11月の大統領選でトランプ前大統領との激突が確実なバイデン氏も、両国の緊密な連携を示して政権浮揚につなげたい思惑が透ける。

 とはいえ、覇権主義的な行動を強める中国や、核・ミサイル技術を高める北朝鮮への抑止力強化に向け、結束の誇示は確かに意義があろう。

 日本はトランプ氏が当選した場合の「もしトラ」にも身構える。その表れが、党派を超え同盟の重要性を訴えた議会での首相演説だ。

 中国やロシアの軍事動向などで国際秩序が新たな挑戦に直面しているとし、日米両国が世界の平和と繁栄に「責任を担っている」と強調した。日本は「堅固な同盟と不朽の友好を誓う」と明言した。

 首相が言った日米の「グローバル・パートナーシップ」は抽象的な面もある。大きな責任を日本が果たして担えるのか危惧も否めない。

 同盟強化の具体策の一つが、首脳会談後の共同声明で自衛隊と在日米軍の連携強化に向け指揮・統制枠組みの見直しで一致したことである。

 日本が陸海空3自衛隊を一元的に指揮する「統合作戦司令部」を24年度末に発足させるのに伴い、在日米軍も体制を強化し、即応性を持たせる方針という。ミサイルをはじめ防衛装備品の共同開発・生産を促進する定期協議などに向けた作業部会も設置する。

 抑止力を向上させるため、合意した事項を具体化できるかどうか焦点となろう。同時に米軍と一体化が強まるとの懸念も国内で出そうだ。日本の主導権に疑問符が付く恐れも拭えず、しっかりとした説明が欠かせない。

 中国に対抗してバイデン政権は、インド太平洋地域の同盟・友好国と多層的に連携を進めている。今回はフィリピンのマルコス大統領を加えた初の3カ国首脳会談も開き、東・南シナ海での中国による威圧的行動を批判し、自衛隊と米比両軍の海上共同訓練の拡充で一致した。

 ただ、首相が掲げる「自由で開かれた国際秩序の堅持」には、中国との対話も必要だ。日米の共同声明でも、首脳レベルを含め、中国との間の率直な意思疎通の重要性を強調した。実際、バイデン氏は日米会談に先立ち、習近平国家主席と電話会談し、対立激化や衝突を防ぐため軍同士を含めた幅広い分野での対話推進を確認している。

 中国との関係を巡っては、19年12月を最後に途絶えている日本、中国、韓国の首脳会談を、議長国の韓国が5月に開催する方向で調整を進めている。東アジア地域の安定に向け、日中のハイレベル対話を進められるか。首相の手腕が問われる。

(2024年04月13日 08時00分 更新)

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