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コロナ通常医療へ 次の「想定外」にも備えを

 政府が新型コロナウイルスの治療や医療提供体制に関する公費支援を今月末で終了する。来月以降は通常の医療体制へ移行する。

 治療薬代は医療費の窓口負担割合に応じて1~3割の自己負担となり、入院費の補助はなくなる=表。無料のワクチン接種も終了し、高齢者らを対象に秋から冬にかけ年1回の定期接種に移行する。費用は自己負担が最大7千円程度になるよう助成する。

 新型コロナの医療費は当初、全額公費負担だった。感染症法上の位置付けが5類に移行した昨年5月以降、段階的に支援を縮小していた。国内初の感染者確認から4年余で対策は区切りを迎える。

 感染拡大などで2022年度の概算医療費は過去最大の46兆円に上った。通常の医療に戻すことは財政面からもやむを得まい。だが、これで気を緩めるわけにはいかない。

 年に何度も流行を繰り返す状況に「まだ普通の感染症になっていない」と専門家は指摘する。治療控えによる重症化を招かないよう政府は国民への説明に努め、感染の動向を注視する必要がある。

 新型コロナは多くの教訓を残した。特に重要なのは「想定外」の流行の恐れを踏まえた危機管理体制を組まなければいけないということだ。次の感染症の世界的な流行は必ず起きるとの警告もある。

 改正感染症法は、新たな感染症拡大時に病床を確保できるよう都道府県が医療機関と協定を結ぶことを定める。

 厚生労働省は2月、未回答を除く44道府県が約3万4千床を確保できる見込みだと明らかにした。9月までに協定の締結を進め、全国で5万1千床の確保を目標に上積みを目指す。岡山県は最大で590床を目標にしている。

 医療機関の逼迫(ひっぱく)回避には大病院と診療所、さらに高齢者施設などとの連携も大切である。重い倦怠(けんたい)感など後遺症に対する支援も求められる。

 看過できないのは、コロナ禍が明けて、東京一極集中が再び加速したことだ。総務省の昨年の人口移動報告によると、東京都は転入者が転出者を上回る「転入超過」が6万8千人余で、前年から8割増えた。

 コロナ禍では人口密集のリスクが認識され、全国で地方移住が広がりつつあった。一極集中が進めば、医療機関が想定を超える対応を迫られかねない。その是正は感染症対策からも欠かせない。

(2024年03月24日 08時00分 更新)

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