山陽新聞デジタル|さんデジ

SNSの偽情報 広告稼ぎの拡散に対策を

 能登半島地震では、交流サイト(SNS)で偽情報の投稿が相次いだ。虚偽の救助情報で消防や警察が出動した例もあった。災害時にSNSは現場の情報を発信・把握する有効な手段となり得るが、偽情報が氾濫すれば支援活動の妨げになりかねない。国は、SNSの運営事業者とともに対策を講じるべきだ。

 虚偽の投稿は多数あった。金沢市では実在する住所で救助情報が寄せられ、消防隊を派遣したが、住人は無事で近隣も被害がなかった。石川県加賀市では救助を求める投稿があるとの119番を受けたが、現場は無人の空き倉庫だった。混乱に乗じたいたずらだった可能性がある。本当に助けが必要な人への対応に支障が生じた恐れもあり、断じて許されない。

 他にも、東日本大震災の津波の映像を今回の地震被害のように見せかけた投稿があり、被災者の不安をあおった。「闇の勢力が人工地震を起こした」「全国から盗賊団が大集結中」といった根拠不明の投稿もあった。個人宛てに送金を呼びかける虚偽の寄付募集も見られた。

 国は災害時などの偽情報対策を検討するため、総務省の有識者会議に専門の作業部会を設置した。SNS事業者を対象に、能登半島地震での対応について調査している。

 作業部会で問題と指摘されている一つが、SNSの投稿者に対する報酬である。投稿の表示回数に応じて広告収入を分配する仕組みを昨夏ごろに導入したX(旧ツイッター)で、特に偽情報が目立った。専門家の分析によると、被災情報などを複製した投稿のうち、9割以上が普段日本語を使わない人によるものだった。閲覧数が急増する災害時を狙い、目を引きやすい偽情報で広告収入を稼いだとみられる。偽情報の拡散を助長するような仕組みは見直すべきだろう。

 作業部会による聞き取り調査で、明らかな偽情報についてはSNS事業者が削除したり、注意喚起したりしていることも明らかになった。ただ、投稿が殺到する災害時に、事業者が素早く真偽を見極めるのは難しい面があろう。真実の情報を埋もれさせないため、より効果的な対策を検討してもらいたい。

 SNSの利用者は、真偽不明の情報に接した際には発信元が信頼できるかどうか、調べるようにしたい。真実と確認できない情報は安易に広めないことを心がけたい。

(2024年03月07日 08時00分 更新)

あなたにおすすめ

ページトップへ