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診療報酬の改定 看護師に届いたか検証を

 厚生労働省が医療機関の収入に当たる診療報酬の2024年度の改定内容を決めた。6月から実施する。

 看護師ら医療従事者の賃上げ原資を確保するため、初診や再診、入院時にかかる基本的な診察料金を幅広く引き上げる。全ての患者で初診料を上げるのは消費税増税時を除き20年ぶりになる。

 政府が昨年末、診療報酬のうち人件費に相当する「本体」部分を0・88%引き上げると決定したのを受け、中央社会保険医療協議会(厚労相の諮問機関)が個別の価格を答申した。賃金を底上げするベースアップを2%以上実施し、人材確保を図る。

 待遇改善は理解できるが、増額分が看護師らの賃上げに確実に振り向けられるかどうか判然としないとの不満の声も、財源を負担する企業の健康保険組合側にある。

 初診料を引き上げても賃上げに使われたのか、別の経費に充てられたのか見えにくいからだ。確実に職員に届いたかどうか検証が必要である。

 初診料は全ての医療機関で30円増の2910円となる。さらに病床のない診療所が看護師ら職員のベースアップを行う場合、職員や患者数などに応じて60~700円を上乗せする。自己負担が3割の患者が窓口で支払う額は9~219円増える。

 再診料も一律で20円増の750円となり、同様に最大100円上乗せする。3割負担の窓口支払額は6~36円増える。病床のある診療所や病院も初・再診料の引き上げや、上乗せの仕組みの一部が対象となる。入院基本料も同様である。

 政府や医療機関は、自己負担が増える患者に対して丁寧な周知が求められるのは言うまでもない。患者が納得できる医療の充実につなげねばならない。

 併せて、効果に注目したいのは、子どもが入院する際に親らが泊まり込みで世話をする「付き添い入院」の負担軽減策も盛り込んだことだ。子どもを見守る保育士や看護補助者を病棟に手厚く配置した場合、報酬を増額する。

 付き添い入院は病院側が要請するケースが多い。親らは睡眠や休憩がほとんど取れず体調を崩すこともあり、改善を求める声が出ていた。対策の必要性はこの欄でも指摘してきた。

 これまでは医療機関が小児病棟などに保育士を配置した際には、保育士の人数にかかわらず、子ども1人当たり1日千円以上を加算していた。今回の改定では、保育士を2人以上配置すれば1800円以上に引き上げる。夜間の寝かしつけや日中の見守りのために看護補助者を勤務させた場合の報酬も創設する。

 病院側が付き添いを要請する背景には、看護人材の不足があるとされる。家族が仕事をしながらでも子どもの療養に安心して向き合えるよう、医療機関は支援体制の整備に生かしてもらいたい。

(2024年03月05日 08時00分 更新)

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