山陽新聞デジタル|さんデジ

2日間の政倫審 核心はいまだ「闇」の中だ

 問題の核心は依然、闇の中だ。自民党派閥の政治資金パーティーを巡る裏金事件である。おととい、きのうの2日間、衆院政治倫理審査会が開かれた。党総裁の岸田文雄首相と派閥幹部が出席したが、従来の説明の域を出なかった。疑念払拭には到底及ばず、国民の政治不信は深まる一方である。

 パーティー券の販売ノルマ超過分を政治資金収支報告書に記載せず、議員側に還流などしたとされる安倍、二階両派の事務総長経験者らに、岸田首相を加えた計6人がそれぞれ弁明し、質疑に応じた。報道機関の取材を含む「全面公開」で行われたが、国民の信頼を回復する貴重な機会を生かせなかったと言わざるを得ないだろう。

 裏金事件の主舞台となったのは安倍派である。その事務総長や座長の経験者がきのう出席した。派閥幹部として、国民の政治不信を招いたことに「心よりおわび申し上げる」と口をそろえたが、肝心の裏金問題については「派閥の帳簿、通帳、収支報告書などを見たことがない」(元事務総長の西村康稔前経済産業相)などと関与を否定した。事務総長の仕事は若手議員の支援などにとどまり、会計には関わらないといった説明もあったが、派閥運営の要となる役職であり、不自然な印象は否めない。

 安倍派では2022年、当時会長だった安倍晋三元首相の意向で還流取りやめが決まったが、安倍氏の死去後に方針が撤回された。政倫審では、その経緯に質問が集中した。協議の場に出席していたとされる議員が出席については認めたが、協議の内容については明言を避けたり、不明瞭だったりした。真相が判然としない状況に変わりない。

 今回の政倫審は公開の在り方を巡って与野党が対立し、日程調整が難航した。事態を打開したのは、岸田首相の出席だった。全面公開で臨むとし、他の派閥幹部も追随する流れをつくった。初日の政倫審で「党総裁として自ら説明責任を果たす」と述べた。

 だが首相の答弁は、党が先に公表した聞き取り調査の範囲にとどまった。安倍派の資金還流がいつ、誰の指示で始まったのかを問われても「十分に確認できていない。さまざまな場で関係者の説明が続けられなければならない」と人ごとのような答弁でかわした。安倍派の前身派閥会長で、経緯を知る可能性のある森喜朗元首相への事実確認もしていなかった。野党議員の「ポーズだけの率先垂範だ」との指摘は当然だろう。

 政倫審に自民が応じた背景には、年度内成立を目指す24年度予算案の存在があった。予算が成立すると「野党側のさらなる追及に与党が耳を傾けなくなることも予想される」との識者の指摘もある。

 だが、国民の政治不信を解消するには、参考人招致や証人喚問を視野に真相の徹底解明が欠かせない。

(2024年03月02日 08時00分 更新)

あなたにおすすめ

ページトップへ