山陽新聞デジタル|さんデジ

海、川のプラごみ 密集地で回収の仕組みを

 瀬戸内海や川に大量にたまっているプラスチックごみをどうするか―。「海ごみ・プラごみ削減フォーラム」(岡山県主催、山陽新聞社など共催)が岡山市内であり、最前線で取り組む団体の活動報告やシンポジウムを通じて、プラごみの実態や対策の方向性が浮かび上がってきた。

 ここ数年盛んになったごみの調査や回収活動から、河川敷や海岸でごみを一掃しても3カ月もすれば新たなごみが蓄積する場所が多くあることが分かってきた。川の上流から来たり、河口などを経て海の波で漂着したりする。

 海ごみの多くは陸域が発生源だ。プラごみをこれ以上増やさないためには当然ながら、われわれの日常生活などから出る新たなごみの発生を抑えることが不可欠である。

 シンポなどでは、発生抑制だけでなく、既に川や海に出たごみを回収する必要があると指摘された。ごみは特に、見えにくく近づきにくい場所に大量にある。川なら河川敷の草むらや水際のアシの中、海岸なら島などで木々や断崖にはばまれ道がない、船が接岸できないといった具合だ。

 放置すればプラスチックが劣化し細分化して、環境への悪影響が懸念されているマイクロプラスチック(直径5ミリ以下)が際限なく発生してしまう。そうなれば回収はほぼ不可能だ。形があるうちの早めの対応が求められる。

 議論の中では、ごみが密集して蓄積する“ホットスポット”とも言われる場所で集中的に回収することが効果的であると、強調された。

 川や海でごみが密集する場所は、市民団体の調査活動から明らかになってきている。例えば倉敷市玉島地区沖の手島(丸亀市)の北海岸。瀬戸内海中央部で最もひどい状況とも指摘されている。

 これらの場所で官民が連携し、継続的に長期にわたって取り続ける仕組みをつくることが求められる。

 岡山では、川やそこに流れ込む用水などのごみの密集場所を地図で示し、地元住民らのボランティアを“サポーター”として日常的な回収を託していく取り組みを広げている団体もある。こういった手法を制度として確立していくことも考えられよう。

 岡山県は昨年、ボランティアが大規模清掃で回収したごみを一定の条件で市町村が運搬・処理し、経費を県が負担する制度を設けて好評だ。行政には、回収を支援する制度の拡充が求められる。

 手島は香川県だが、北海岸のごみの多くは岡山県側から漂着したとみられる。岡山の団体がごみを回収して持ち帰ることは望まれるが、他の自治体のごみを地元自治体が処理するのは制度上の困難が伴う。ごみ回収の仕組みづくりには、自治体間で協力して対処することも重要だ。

(2024年03月01日 08時00分 更新)

あなたにおすすめ

ページトップへ