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裏金巡る政倫審 疑念払拭につながるのか

 自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件を受けた衆院政治倫理審査会がようやく開かれる。きょう、あすの2日間。「政治とカネ」を巡る国民の疑念を払拭できるか問われている。

 与野党は先週、政倫審を28、29両日に開くことで大筋合意していた。しかし、報道機関の取材を含む「全面公開」を要求する野党側と、拒否する自民が対立。開催のめどが立たない中、岸田文雄首相がきのう、党総裁として「マスコミオープンの下で説明責任を果たしたい」と政倫審出席の意向を表明した。その後、既に出席を申し出ていた安倍、二階両派の計5人も全面公開に応じることになった。

 首相の言動が事態の打開につながったのは間違いないだろう。だが、真にリーダーシップを発揮すべきは、党所属の議員たちに真実を語らせることである。派閥の政治資金パーティーでパーティー券の販売ノルマ超過分を所属議員に還流する慣習はいつ、なぜ生まれ、資金を何に使っていたのか。安倍派では2022年、安倍晋三元首相の意向で還流取りやめがいったん決まったものの、安倍氏の死去後に方針撤回されている。幹部らがどう関わったのか。政倫審で真摯(しんし)に語るよう強く促すべきだ。

 国民が疑念を抱いているのは政治資金の不透明な流れである。透明にしなければ、国民の政治不信が収まることはあるまい。自民が先に公表した所属国会議員への聞き取り調査結果では、焦点である裏金の使途を巡り「会合費」「人件費」などを主なものとして列挙しただけにとどまり、実態解明には程遠い内容だった。政倫審で明らかにしてもらいたい。

 政倫審はロッキード事件をきっかけとして1985年、衆参両院に設置された。法令違反などの疑惑を持たれた議員に政治的、道義的責任があるかを審査する。ただ、証人喚問と違って偽証罪に問われることはない。衆院で過去9回開かれ、8人が出席したが、潔白を主張し「幕引き」を図る舞台に利用されたとの指摘もある。

 政倫審は原則非公開で、公開には本人同意が必要だが、国民の疑念の強さを考えれば、全面公開は当然の対応だ。自民が全面公開を受け入れ、政倫審の開催日程が決まった背景には、衆院で審議中の2024年度予算案がある。年度内成立を確実にするには来月2日までに衆院を通過させる必要がある。政府、与党は能登半島地震の被災地復興など「国民生活にとって極めて重要な予算だ」(岸田首相)として早期の成立を目指す。その審議日程を視野に入れ与野党が駆け引きを繰り広げてきた。

 予算審議はもちろん大事だが、裏金問題も徹底解明が求められる。政倫審を疑惑について「追及した」「答えた」というアリバイづくりの場にすることは許されない。

(2024年02月29日 08時00分 更新)

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