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学校の生理用品 生徒の声聴き実証実験を

 岡山県内の公立高校の女子トイレにトイレットペーパーと同じように生理用品を設置してほしい―。高校生の活動が実り、県内の一部の高校で実証実験が行われている。

 3人は岡山市立後楽館高の3年生。2022年に山陽新聞社が開催した高校生大討論会に参加し、活動を本格化させた。昨年は、クラウドファンディング(CF)で、県内の公立高に1年間を通じて生理用品を設置できる目標額(200万円)を超す資金を集めた。県議会にはCF資金による生理用品の設置を求める陳情を提出し、全会一致で採択されている。

 県内の公立高と特別支援学校の計78校を対象に実証実験への参加を呼びかけたところ、8校が参加を表明。昨年9月以降、準備できた学校から順次、実証実験を始めた。

 トイレに生理用品を置いた学校の生徒の反応はおおむね良好で、アンケートでは「生理のつらい期間でも学校が安心できる場所になった」「急に生理になった時に助かった」などの意見が寄せられた。継続を望む意見が大多数を占めた。目立ったトラブルは確認されなかったという。

 一方、残念なのは不参加が70校にも上ったことだ。不参加校にアンケートしたところ、回答した学校のうち、6割以上の学校が教員の判断で不参加を決めていた。

 思い起こしたいのは昨年4月に施行された「こども基本法」だ。日本の子ども政策は大きく転換し、昨年末に閣議決定された「こども大綱」では子どもや若者を「権利の主体」と位置付け、意見を尊重することが明記された。

 生徒自身に関わる問題について知らせ、生徒自身が考え、意見を述べる機会を設けることは周囲の大人の役割といえる。高校では生徒会の活動も活発だ。生徒会に実証実験について伝え、意見集約してもらうことも一案だろう。

 後楽館高の生徒たちは引き続き、実証実験への参加校を募っている。生徒の声を聴き、より多くの学校に実証実験に加わってもらいたい。

 自治体が公費で学校のトイレに生理用品を設置する取り組みは各地で広がっている。東京都は21年から全都立学校のトイレに設置。神奈川、熊本、長崎県なども県立学校に設置した。岡山県内では総社市が昨年から市立中の全4校で設置するなど、中学校のトイレに置く動きもある。

 生理を語ることをタブー視する風潮もあり、日本では女性に毎月訪れる身体の不調や経済的な負担が社会の問題として認識されてこなかった。欧米では近年、女性を巡る不平等の問題としてとらえ、学校や公共施設のトイレに生理用品を常備したり、生理用品への税率を下げたりする議論が進んでいる。こうした世界の潮流も知っておきたい。

(2024年02月28日 08時00分 更新)

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