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ロシアの侵攻2年 「支援疲れ」乗り越えねば

 ロシアがウクライナに侵攻して、きょうで2年となる。前線では激しい戦闘が続き、ロシア側は都市やインフラを狙った攻撃を繰り返している。国連によれば、ウクライナの民間人死者数は1万人を超え、1千万人以上が自宅からの避難を余儀なくされている。停戦はいまだ見通せない。ウクライナも、欧米や日本などの支援国も、長期戦と向き合っていかねばならない。

 ウクライナ軍は昨夏、欧米からの武器供与を受けて同国南東部で反転攻勢をかけたが、ロシアの防衛線を崩せず多くの兵力を失った。ウクライナのゼレンスキー政権は、侵攻以来、軍を指揮してきたザルジニー総司令官を今月解任し、攻撃から防衛に転じる方針を明らかにした。国民的人気の高いザルジニー氏の解任は、軍の士気や政権の求心力に影響を及ぼすのではないかと懸念されている。

 戦闘が長引き、欧米の「支援疲れ」も指摘される。欧州連合(EU)は今月、ウクライナに対する約500億ユーロ(約8兆円)の支援を決めたものの、ハンガリーの反対で難航するなど一枚岩とは言えない。ロシアへの経済制裁に伴うインフレなどで市民に不満が鬱積(うっせき)し、ウクライナ支援の停止を求める世論が高まっている国もある。

 最大の武器供与国である米国もぐらついている。バイデン民主党政権が約600億ドル(約9兆円)のウクライナ支援を含む緊急予算案を議会に提案したのに対し、下院で多数を占める共和党の一部が反対している。今秋には大統領選も控える。トランプ前大統領が返り咲き、米国の自国第一主義が強まれば、支援体制が大きく揺らぎかねない。

 事態の解決に当たるべき国連安全保障理事会は、当事国のロシアが拒否権を発動し、機能不全に陥っている。国際社会で存在感を強める「グローバルサウス」と呼ばれる新興・途上国の中には、ロシアと一定の関係を保ち、制裁に加わらない国もある。

 先行きが不透明な中で今月、日本は「日ウクライナ経済復興推進会議」を東京で開き、官民一体でウクライナを経済面で支えていくことを決めた。158億円の無償資金協力を行い、地雷対策や農業、エネルギーなど7分野で協力する。関連企業の関係者が首都キーウに入れるよう渡航制限の特例措置も講じる。

 日本は東日本大震災などから復興を遂げた経験がある。ウクライナは戦闘状態にあるとはいえ、安全が確保できる地域では、生活インフラや産業基盤の再建などで貢献できるだろう。日本がウクライナを支えるという確固とした意思を示すことで、国際社会の結束を促す役割も果たしていきたい。

 他国を侵略し、領土を奪うという暴挙は断じて許されない。ルールに基づく国際秩序を守るためにも、ウクライナへの支援を継続することが重要だ。

(2024年02月24日 08時00分 更新)

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