山陽新聞デジタル|さんデジ

岡山の「受援力」 災害に備え官民連携強く

 災害が起きた時、外部からの支援を受け入れる力を「受援力」と呼ぶ。能登半島地震では専門知識のある全国のNPOが十分に活動できていないと指摘され、改めて受援力の重要性が注目されている。

 地震発生の翌日から石川県に支援に入っている認定NPO法人「全国災害ボランティア支援団体ネットワーク」(JVOAD、東京)の栗田暢之代表理事は今月初め、共同通信加盟社論説研究会で講演。「専門性があり、自立して活動できるNPOにはもっと(被災地に)入ってほしい」と訴えた。

 今回の地震を巡っては石川県が当初、自治体の受け入れ態勢が整わないとしてボランティア活動を控えるよう呼びかけた経緯がある。

 栗田氏によれば被災地では当初、自治体職員が疲弊して人手が足りず、食料などの支援物資が届かない地域もあったという。混乱の原因として挙げられるのが、石川県内に官民の調整役となる「災害中間支援組織」がなかったことだ。JVOADと県が今後設立を検討する予定だったが、間に合わなかったという。

 政府は昨年、国や自治体の災害対応の基礎となる防災基本計画を修正し、都道府県が中間支援組織の育成に努めるよう明記した。中間支援組織は主に民間団体が想定され、行政と県内外のNPOなどの活動を調整する役割を担う。都道府県の半数程度に中間支援組織があるという。

 岡山県では、2018年の西日本豪雨を契機にできた「災害支援ネットワークおかやま」がこれに当たる。岡山NPOセンターが事務局を務め、参画組織はNPOや企業など約200に上っている。

 今月13日、岡山市内で開かれた岡山県防災会議では、国の方針を踏まえて県地域防災計画を修正し、中間支援組織の育成・強化を盛り込んだ。会議には初めて同ネットワークの世話人も招かれ、活動報告した。

 県防災会議は知事を会長に国の出先機関や自治体、ライフライン事業者などの代表で構成する(委員59人)。速やかに同ネットワークも委員に加え、大規模災害に備えた役割分担の議論を進めたい。

 中間支援組織には被災者と支援団体のマッチングを担う役割も期待される。西日本豪雨では岡山市と同ネットワークが協力し、浸水被害を受けた世帯を訪問して困り事を聴き、必要な支援団体につなげた実績がある。

 避難所に行かずに自宅や車中で過ごす在宅避難者に、情報や支援が届きにくい問題は能登半島地震でも指摘されている。大規模災害では、在宅避難者の実態把握は自治体職員だけでは限界がある。被災者の個人情報を官民でどう情報共有するかなども課題だ。議論を詰めておきたい。

(2024年02月22日 08時00分 更新)

あなたにおすすめ

ページトップへ