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県都の歴史遺産 活用と保存両立で後世に

 「令和の大改修」で漆黒の外壁を塗り直し、内部の展示を分かりやすく一新した岡山城の天守閣が人気だ。2022年11月のリニューアルオープンから1年間の入場者数は延べ47万2215人。山陽新幹線が岡山まで開通した直後の1972年度に記録した年間最多43万9884人を上回った。今も岡山県内外から観光客らが絶えない=写真

 岡山城は岡山市中心部にあり、周囲には多くの文化施設が集積し「岡山カルチャーゾーン」を形成している。人気を持続させ、まちのにぎわいにつなげたい。近くの石山公園などの活用も鍵となろう。

 岡山市は2024年度当初予算案に岡山城活用事業1億7700万円を計上した。力点を置くのは、城下町・岡山の礎を築いた戦国武将宇喜多氏の情報発信だ。NHKの大河ドラマ化を目指しており、PRのためのパンフレット類の作製、イベントでのブース出展などを検討している。

 歴史遺産を活用した観光振興は、予算案の柱の一つだ。岡山市域を含む古代吉備は、畿内のヤマト王権に匹敵する勢力を誇ったといわれ、市内には多くの古墳が点在する。戦国時代、豊臣秀吉の水攻めの舞台となった備中高松城もある。地域の強みを生かした取り組みといえよう。

 予算案には歴史遺産を活用した市観光ウェブサイト「おかやまレキタビ」の充実策も盛り込んだ。サイトは「岡山城と城下町の形成」「児島湾干拓と開墾」など市内に残る六つの歴史ストーリーに焦点を当て、犬、猿、キジの会話形式で親しみやすく紹介している。24年度は新たな歴史ストーリーを二つ追加する。

 「レキタビ」はストーリーごとに関係スポットを回るモデルコースを示しており、観光客を現地に誘導するのが狙いだ。ただ、モデルコースには車での移動を前提としたものもある。その一つが、誰でも立ち入れる古墳としては国内最大の造山(つくりやま)古墳だ。交通アクセスの悪さが課題であり、バスなどの公共交通やレンタサイクルを充実させなければなるまい。

 倉敷市にある弥生時代最大級の墳丘墓・楯築(たてつき)遺跡、総社市の作山古墳など、周辺自治体でも保存・活用の動きが出ている。連携を強め、相乗効果を発揮することが必要だ。

 文化財の活用は近年の潮流だが、保存の視点も欠かせない。活用と保存のバランスを取りながら、郷土の歴史遺産を後世に残していきたい。

(2024年02月20日 08時00分 更新)

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