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岡山県予算案 人口流出の危機感見えぬ

 岡山県が2024年度の当初予算案をまとめた。一般会計は7505億5100万円で前年度当初比6・4%減と6年ぶりのマイナス編成となった。西日本豪雨被災地の大規模河川改修や県庁舎耐震化工事の完了などが要因だ。

 伊原木隆太知事にとって3期目最後の当初予算案である。県政運営の2本柱とする「教育再生」と「産業振興」に加え、最重要課題に掲げる「少子化対策」に予算を重点配分したとしている。任期の総仕上げにあっても奇をてらわず堅実路線を維持したが、全般的に事業が小粒でインパクトに欠ける面は否めない。

 例えば少子化対策では、男性が育児休業を取得した企業に1人最大45万円の奨励金を支給する制度を新設した。企業とタイアップして取得を後押しする取り組みは評価できる。ただ、知事査定で予算を積み増したとはいえ、事業費は1億円余りで、利用見込みは480件と限りがある。県内全域に効果を行き渡らせられるかは未知数だ。

 予算案を発表した記者会見で、知事は「人口減少問題に挑む決意を形にした」と強調した。問題意識は当然だが、予算案からは深刻な状況にある人口流出への危機感が伝わってこない。

 岡山県は転出者が転入者を上回る「転出超過」が全国的にも多く、23年は約4200人(日本人のみ)に上る。知事が就任して以降を見ても増加傾向で、この10年間で11倍以上に増えている。若者や女性が目立つのが特徴だ。

 学生の“岡山離れ”も見過ごせない。県の調査によると、22年度に県内の大学を卒業した人の県内就職率は43%(目標は24年度に48%)、県外の大学に進学した県出身者のUターン就職率は34%(同39%)にとどまる。

 教育再生によって人材を育てても、県外に流出すれば産業振興に影響が出よう。この2本柱を「県発展のエンジン」と位置付け、好循環を生み出すとする知事の戦略そのものが揺らぎかねない。50年には働き手となる15~64歳の人口が20年と比べて県内で約30万人減るとの推計もある。早急に手を打つべきだ。

 3年連続で人口流出が全国ワーストの広島県は若年層の転出超過を「喫緊の課題」と位置付け、24年度はプロジェクトチームを新設して転出要因を分析する。岡山県は東京23区からのIJUターン就職支援の拡充といった事業を予定する。人口流出の圧力が強まる中、従来型だけでなく、新たな強い施策の展開も必要なのではないか。

 死亡が出生を上回る「自然減」が続き、これに流出が重なって人口は減るばかりだ。歯止めをかける手だてについて、予算案が審議される22日開会の定例県議会で議論を深めてもらいたい。

(2024年02月17日 08時00分 更新)

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