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「カラオケ行こ!」(2024年、日本) ヤクザが歌うX JAPAN

 シネじい 笠置シヅ子をモデルにした主人公福来スズ子(趣里)の活躍を描くNHKの朝ドラ「ブギウギ」が面白くてたまらない。

 黒じい 戦後、ついに「昭和の喜劇王エノケン」こと榎本健一をモデルにしたタナケン(生瀬勝久)と舞台で共演を果たしたね。

 シネじい 正直、エノケンの舞台や映画を見たことはないが、私が今でも尊敬してやまない文化人類学者山口昌男先生(1931~2013年)が、エノケンについてよく言及していたのを思い出した。

 黒じい 昨年が山口先生の没後10年。先生は文化人類学者としてはアフリカが専門だったが、芸能史の研究でも有名だったね。

 シネじい で、「エノケンと菊谷栄―昭和精神史の匿れた水脈」(晶文社)を未読だったことに気づいてパラパラめくってみた。笠置シヅ子の記述がないかな、と。

 黒じい それは、遺稿をまとめた本だね。菊谷栄は、画家であり、エノケンのレビュー作家を務めた人。エノケンと菊谷栄を軸に、山口昌男らしい隠れた精神史を描こうとしている。

 シネじい 例によっておびただしく人物の名前が出てくる。「懐かしいなあ、この感じ」と思いながら、まず人物名の索引を引いてみたら、岡山市出身の無声映画の大スター、「目玉の松ちゃん」こと尾上松之助が載っているではありませんか。

 黒じい エノケンは「目玉の松ちゃん」を大変尊敬していたんだね。

 シネじい それはいいのだけど、索引には肝心の笠置シヅ子がない! ちょっと残念(笑)。

 黒じい 笠置シヅ子は現代的すぎたんだよ。曲だって「ラップと娘」だし。

 黒じい 「ラッパと娘」だろ!

 シネじい ただ残念なのは、スズ子とタナケンの共演の舞台があまり面白そうじゃなかったことかな。 

 黒じい そこはドラマですから、爆笑ということで(笑)。 

 シネじい そこへいくと、今回紹介する「カラオケ行こ!」には本当に笑ったよ。大阪の中学校3年生で合唱部部長を務めるソプラノの岡聡実君(齋藤潤)が、ヤクザから歌の指導を頼まれるというありえないコメディーだ。...
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(2024年01月23日 11時46分 更新)

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