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私服登校「気分上がる」 岡山・御津高でフリードレス週間

パーカや制服などを着用して授業を受ける生徒ら
パーカや制服などを着用して授業を受ける生徒ら
思い思いの服装で登校した生徒
思い思いの服装で登校した生徒
私服登校に「モチベーションが上がる」と話す歌房さん(左)ら
私服登校に「モチベーションが上がる」と話す歌房さん(左)ら
 学校生活に必要な身だしなみを生徒自身で考えようと、御津高(岡山市北区御津金川)生徒が11~22日を「フリードレス週間」と定め、自由な服装で登校した。県内全日制高校では初めての試みという。実際にどんな服装で通い、何を感じたのか。終盤の19日に学校を訪れてみた。

 市北部の旭川沿いにあり、全校生徒は204人。半分ほどの生徒が私服で登校し、パーカの上からダウンベストを羽織ったり、デニム生地のジャケットやスポーツジャージーを着用したりと着こなしはさまざまだ。制服姿でも小ぶりのストーンやシルバーのフープピアスを着ける生徒もいる。それぞれが思い思いのスタイルで授業に臨んでいた。

 期間中、生徒は規定の制服以外に私服で学校生活が送れる。普段は禁止されているアクセサリーの着用やネイルアート、化粧も可能という。昔からある校則を生徒自身が見直す試みの一環で、4月に生徒会などで立ち上げた校則検討委員会が中心となって話し合いを進め、試行が決まった。

 「社会に出るとTPO(時、場所、状況)をわきまえた服装を自分たちで選ぶ必要がある。高校生のうちからその場にふさわしい服装を考えてほしいと思う」と検討委メンバーの3年歌房鈴さん(17)が教えてくれた。

 歌房さんは初日から私服で登校していて、この日はスエットにカーゴパンツを合わせ、ラメ入りのアイシャドーも。「暖かさを重視して服を選び、学校に来るモチベーションを上げるためラメ入りのアイシャドーを付けた」

 最初の頃は私服の生徒が少なく恥ずかしさもあったが、日がたつにつれて増え、他校の友人からもうらやましがられてうれしかったそう。「私服や化粧をした方が華やかに見えて友達と写真を撮るのも楽しい。勉強や学校に来るのが嫌なときにも気分を上げられる」と笑顔を見せた。

 一方、ずっと制服で登校しているという3年男子(18)は「朝は時間がないので選ぶ手間が省けるし、おしゃれを気にしなくていい」と改めて制服のメリットを感じた様子。3年女子(17)は「服装を考えるのが大変なときは制服、規定のスカートでは寒い日は私服の長ズボンで登校する」と使い分けているという。

 校則を巡っては、2022年12月に文部科学省が公表した教員用手引書「生徒指導提要」の改訂版で、学校の状況や社会の変化を踏まえ「意義を適切に説明できない」場合の是正を求め、見直し作業に児童生徒の参加を促している。児童生徒にとっては学校のルールを無批判に受け入れず、課題を自ら解決する教育的意義があるとも説いている。

 御津高の検討委はこれまでも、クールビズ制度の導入や授業時間以外のスマホ利用許可といったルール変更に取り組んできた。服装については期間中に実施した生徒へのアンケートをまとめ、1月に全体で共有した上で校則の在り方を検討する予定という。どんな結果になるのか注目したい。

 校則検討委員会を担当する矢原孝則教諭(36)の話 フリードレス週間をやってみて、生徒の表情が明るいと感じた。普段のあいさつに加え、教師と生徒間や生徒同士で「その服かわいい」「どこで買ったん?」といった対話が生まれ、生徒が意欲的になる効果もあった。

 当初は露出の多い私服などを警戒していたが、実際は学校生活に不便だと感じた服装を改める生徒もいた。生徒が自らTPOを意識できることに気付けたのも大きい。

 生徒たちにはこの経験を通じ、ルールだからとただ従うのではなく、なぜ、どんな意味があるのかを問い直し、自分で考えて判断、行動する力を身に付けるきっかけにしてほしい。

(2023年12月23日 14時44分 更新)

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