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性別変更手術要件違憲決定を考える~当事者代理人の立場から

 最高裁判所が令和5年10月25日に性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律(以下「特例法」)の生殖腺除去手術要件(特例法第3条第1項第4号)について憲法第13条に違反し無効であるとの決定(以下「今回の最高裁決定」)を出しました。

 同じ生殖腺除去手術要件の違憲性を争った平成31年1月23日最高裁判所決定(以下「前回の最高裁決定」)の際の申立人臼井崇来人さんの代理人を私が務めていたことから今回のコラムは今回の最高裁決定について書きたいと思います。

 前回の最高裁決定では生殖腺除去手術要件について「現時点では合憲」とされ、補足意見では違憲の疑いが生じていることまでは否定できないと判断されていました。

 その4年9カ月後に、今回の最高裁決定において判断が変更され生殖腺除去手術要件が違憲無効とされました。

 私としては、前回の最高裁決定について「現時点で」と限定がついていたので時間がたてば最高裁判所が違憲と判断してくれると考えていましたが、やはり違憲となるには10年くらいかかるだろうと考え、前回の最高裁決定から10年後くらいに最高裁判所での審理になるように昨年の12月に、臼井さんとお話して国会が特例法の手術要件を撤廃しないこと(立法不作為)が違法として国家賠償請求訴訟を提起することに決めました。その直後に今回の最高裁決定について最高裁判所裁判官全員で審理する大法廷に回付されることを知り驚きました。

 最高裁判所の大法廷に回付された場合には、今までの最高裁判所の判断が変更されることが多いので、我々の国家賠償請求訴訟の提起も保留することにしました。

 その中で、令和5年10月11日に静岡家庭裁判所浜松支部において、性同一性障害者の人権に配慮した特例法の生殖腺除去手術要件を違憲無効とする素晴らしい内容の決定が出て、通常は最高裁判所の判断が出ることが分かっていれば家庭裁判所では判断を待つはずですので、とても驚きました。

 このような状況で、今回の最高裁決定において特例法の生殖腺除去手術要件が違憲無効と判断されました。

 ここで今回の最高裁決定について見ていきますと前回の最高裁決定と同様に特例法の生殖腺除去手術要件が「自己の意思に反して身体への侵襲を受けない自由」を侵害して違憲ではないか検討されており判断基準としては前回の最高裁決定と同じと考えます。

 今回の最高裁決定が前回の最高裁決定と異なる点は大きく2つあると考えます。...
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(2023年10月26日 18時15分 更新)

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