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高校の探究学習(下) 企業や地域が支えてこそ

発表を終えた後、学校の枠を超えて交流うする生徒や企業人ら
発表を終えた後、学校の枠を超えて交流うする生徒や企業人ら
 岡山県内の高校が参加した昨年末の高校生探究フォーラム(県教委主催)。38校49グループが取り組んだ探究学習のテーマは多種多様でした。

 注目したのは地域や社会の課題に目を向け、解決に向けて取り組むグループの多さです。こうした高校生の活動は以前から行われ、「地域学」とも呼ばれています。

 一部を紹介すると、和気閑谷高は耕作放棄地の活用方法を検討。津山工高は放置竹林の対策として伐採した竹の有効活用策を研究しています。中山間地域の活性化に関心を持つ一宮高は真庭市に出向いて高齢化が進む地域のイベントを支援しています。

 「岡山県内の探究学習は各校のレベルが高い」。フォーラムを訪れた大正大地域創生学部の浦崎太郎教授は話します。高校教員の経験があり、全国の探究学習の事情に詳しい専門家の一人。東京など大都市部に比べ、地域の課題が身近に感じられる地方は探究学習にとって絶好の学びの場といいます。

 探究学習が求められる背景を、浦崎教授に解説してもらいました。平成の30年間で世界は工業社会から情報社会へと移り変わりました。工業社会では規格品の大量生産に役立つ、指示されたことを速く正確にこなす人材が求められました。授業は教員が知識を伝達する一斉授業で、生徒個人の興味関心はむしろ抑えられていました。

 しかし、インターネットが普及した情報社会では知識はすぐに入手できます。求められるのは自ら課題を見つけ、解決していこうとする力。育むためには生徒自身が面白いと思って夢中になれる学びが必要ですが、生徒たちの興味関心は千差万別で、全てを高校がそろえるのは無理。「地域との協働が不可欠」と浦崎教授は言います。

 県教委は高校と地域の連携強化を目指しており、フォーラムには大学や企業の関係者約30人も参加しました。見どころはむしろ、各校が発表を終えた後でした。学校の枠を超えて生徒や企業人らが車座で交流。探究学習を進めるための知恵を出し合いました。「こんな機会は初めてで刺激を受けた」。感想を聞くと生徒たちから生き生きした声が返ってきました。

 高校生を育む探究学習の可能性を感じさせられました。企業をはじめ地域の人々が支え、探究学習の先進県を目指したい。それは地方創生につながる道でもあります。

(2023年02月02日 08時00分 更新)

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