2018年7月6日、晴れの国・岡山県に未曽有の水害をもたらした西日本豪雨。ようやく仮設住宅解消の区切りを迎えたが、特に被害が大きかった倉敷市真備町地区の人口は約1割減ったままだ。死者61人(関連死除く)、住宅の全半壊8195棟という災禍を風化させないためにも、私たちは再生の歩みをこれからも伝え続ける。
豪雨5年アンケート
豪雨発生から5年を前に、倉敷市真備町地区に在住の方にアンケートを行い、361人から回答を得た。9割以上が「復興が順調に進んでいる」とする一方、7割は「豪雨を思い出すとつらい」としており、橋や堤防などインフラの復旧が着実に進んでいても、心の復興は道半ばという実態が改めて浮かび上がった。
空から見た真備町
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定点写真
末政川の決壊地点
小型無人機ドローンで、決壊地点の西側から北東方向を撮影した。工事では東岸の40メートルと110メートル区間、西岸の150メートル区間の3カ所で堤防を0.7~1メートルかさ上げし、6~10メートル拡幅。上流には架け替えられた橋が見える。
南山(倉敷市)の掘削工事
2019年6月に始まった小田川と高梁川の合流地点を約4.6キロ下流に付け替える工事。最も大がかりな南山(標高76メートル、倉敷市)を山城跡も含めて全て取り除く掘削工事は23年6月に完了し、10月下旬には通水を始める見通しとなった。現在の合流地点を仕切る堤防も23年度中に完成予定で、半世紀以上にわたる懸案だった小田川の洪水対策は大詰めを迎えている。
グラフ
住宅の損壊で住まいを追われた被災者のために用意された岡山県内の仮設住宅。その入居者数は2018年11月、建設型、借上型(みなし仮設)を合わせて9074人をピークに、住宅の再建が進むにつれて減り続け、22年9月には最大8カ所あった建設型の入居者がゼロとなった。残る借上型も発生5年の節目に役割を終える。ただ経済面や健康面などで課題を抱える人は少なくない。被災者が「戻ってきて良かった」と思えるよう、長期的な視点でまちづくり支援が欠かせない。(グラフの数字は各月末時点のもの)
豪雨で広範囲が浸水した倉敷市真備町地区。被災直前の2018年6月末に2万2797人だった人口は被災後に急減し、1年後の19年6月にはほぼ1割減の2万573人、同9月には2万565人まで落ち込んだ。その後、地区内に災害公営住宅3棟が完成し、市内外の仮設住宅で暮らしていた人が次々と入居するなど、21年4月には2万730人まで回復したが、着々と進むハード面の整備とは裏腹に23年1月には2万500人を切り、復興が一筋縄では進まない現実が見て取れる。(グラフの数字は各月末時点のもの)
これまでの経過
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- 2018年
- 7.6
岡山県で初の大雨特別警報。総社市でアルミ工場爆発 - 7.7
倉敷市真備町地区で河川が決壊し、広範囲が水没。岡山市東区でも浸水被害 - 7.10
岡山県内10市町59カ所の避難所に約3900人 - 7.11
安倍晋三首相(当時)が倉敷市真備町地区を視察し、被災者を激励 - 7.15
岡山県内の死者(直接死)61人、行方不明3人に県内の水害で戦後最大級の人的被害
- 7.22
倉敷、総社市で公営住宅やみなし仮設住宅の提供開始 - 8.10
国の調査委員会が倉敷市真備町地区の小田川と3支流の決壊を「越水し、堤防の外側が削られたことが主な要因」と発表 - 9.14
天皇、皇后両陛下(現在の上皇ご夫妻)が倉敷市真備町地区を見舞われる - 10.1
倉敷市真備町地区の2中学校がプレハブ校舎で授業開始 - 10.31
倉敷、総社、高梁市の審査会が計5人を「災害関連死」と判定。西日本豪雨での関連死判定は中国地方で初
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- 2019年
- 1.6
豪雨から半年。岡山県内で仮住まいは約9800人 - 1.30
倉敷市が豪雨時に真備町地区住民の43%が避難していなかったとする調査結果公表 - 3.25
倉敷市が真備町地区の復興5カ年計画を公表。総社市も23年度までの復興計画を発表 - 4.15 国土交通省が倉敷市真備町地区で「高梁川・小田川緊急治水対策河川事務所」の開所式
- 4.26
倉敷市が豪雨時の対応を検証した結果報告書を公表。災害対策本部体制や関係機関との連携が不十分だったとの内容 - 6.16
倉敷市で小田川と高梁川の合流地点付け替え工事の着工式。23年度末の完成目指す - 7.2
総社市のアルミ工場爆発事故で、岡山県警が工場長ら2人を業務上過失傷害などの容疑で書類送検 - 7.6
倉敷、総社市で西日本豪雨1年の追悼式。災害を伝える石碑やプレート除幕も - 7.13
倉敷市真備町地区で「真備・船穂総おどり」が2年ぶりに開催。各地で夏祭り復活へ - 7.30
豪国が豪雨によるインフラなどの被害額を発表。岡山県が都道府県別最多の4018億円 - 9.6
倉敷市真備町地区の末政川で堤防改良復旧工事が終わり、岡山県管理5河川9カ所で改良復旧工事が完了 - 11.29
倉敷市が真備町地区の死者19人が垂直避難で助かった可能性を指摘する調査結果を公表
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- 2020年
- 1.6
豪雨から1年半。岡山県内の仮設暮らしは4970人 - 1.8
倉敷市真備町地区の川辺小で校舎が復旧し、利用開始。他の4幼小中も復旧へ - 4.15
倉敷市真備町地区の被災者32人が河川やダムを管理する国などに損害賠償を求め提訴 - 6.23
倉敷市が災害公営住宅91戸の入居抽選会。7月に全戸の入居決定 - 6.29
岡山県が豪雨の災害ごみ約44万トンの処理が完了と発表 - 7.6
豪雨から2年。岡山県内で2992人が仮設暮らし - 7.13
岡山県が仮設住宅入居者の50.5%が心に何らかの課題があると判定した調査結果公表 - 9.8
岡山県内の仮設住宅で暮らす709世帯が2年間の入居期限を1年延長したと県が公表 - 9.9
倉敷市船穂町柳井原地区の仮設住宅撤去開始。九州豪雨被災地の熊本県へ移設 - 10.11
倉敷市が、全世帯が退去した建設型仮設住宅「柳井原団地」の撤去作業開始 - 12.28
岡山県が仮設住宅入居期限を22年7月までとする再延長が決まったと発表
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- 2021年
- 1.6
豪雨から2年半。岡山県内の仮設入居者はピーク時から8割以上減り1506人 - 1.12
総社市の復興住宅へ被災者の入居開始 - 1.20
総社市のアルミ工場爆発事故を巡り、岡山地検が工場長ら2人を嫌疑不十分で不起訴処分。「浸水予見できず」と判断 - 1.30
倉敷市立真備図書館が復旧終え再開館 - 4.8
倉敷市真備町地区3カ所に市が整備した災害公営住宅が完成し、入居者に鍵を引き渡す - 6.21
岡山県が被災者生活再建制度の加算支援金申請期限を22年8月4日まで延長と発表 - 6.22
国土交通省が小田川と高梁川の付け替え工事の現場を報道陣に公開。工事全体の進捗状況は47% - 7.6
豪雨から3年。岡山県内で665人が仮設暮らし - 9.27
豪雨で爆発事故を起こしたアルミ会社の自己破産手続きの開始決定 - 12.21
岡山県が仮設住宅入居期限を最長で23年7月5日までとする3回目の延長を発表
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- 2022年
- 1.11
岡山県が倉敷市真備町地区に開設した市場仮設団地の撤去を発表 - 1.20
岡山県が倉敷市真備町市場の「市場仮設団地」撤去開始 - 3.26
国土交通省と倉敷市が一部区間を除く小田川の堤防強化工事完了を記念した式典を開催 - 6.30
岡山県が西日本豪雨災害義援金の受け付けを終了 - 7.6
豪雨から4年。岡山県内の仮設入居者は6月末で71人 - 8.17
新柳井原橋が開通。小田川と高梁川の合流点付け替え工事の一環 - 9.29
岡山県が県内唯一となっていた「二万仮設団地」(倉敷市真備町上二万)の撤去を発表 - 10.11
岡山県が「二万仮設団地」の撤去開始 - 12.20
岡山県が管理する全ての2級河川22水系を対象にした「流域治水プロジェクト」を公表 - 12.26
倉敷市真備町地区の末政川に架かる有井橋の架け替え工事が完了し、開通
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- 2023年
- 3.3
岡山県の「くらし復興サポートセンター」が活動終了へシンポ - 3.16
倉敷市が進めていた岡田小(倉敷市真備町岡田)周辺の災害対応工事が完了 - 5.19
伊原木岡山県知事が全ての仮設住宅終了見通しを発表
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