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50kgの車椅子彼氏をおんぶして移動する彼女、”若い今だからできる”心ない声に「今しかできないことを全力でやりたい」

スロープがない場所には”おんぶ”で移動。彼女さんは彼氏さんを座らせ、そのあと車いすを運ぶという
スロープがない場所には”おんぶ”で移動。彼女さんは彼氏さんを座らせ、そのあと車いすを運ぶという
 「私の背中は大きいだろ、彼女がゴリラで良かったな」というコメントともに投稿された、車椅子ユーザーの移動方法が話題に。車椅子の彼氏の前に立ちはだかる階段があっても、彼女が彼氏をおんぶして階段を上り、目的地の屋上デッキまでスマートに連れて行く。2人で支え合いながら一緒の景色を楽しむ姿に「最高な関係で素敵過ぎます」「大切な人同士助け合う姿は美しいよ」「なんか涙出た」と多くのコメントが寄せられています。一方で「そんな対応ができるのは、若い時だけ」「この先どうする?」と心無い声も届いているそう。2人はお互いをどのような存在ととらえ、どんな未来を思い描いているのか? 投稿者の彼氏の車椅子を押すのは私だけさんと彼氏さんに話を聞きました。

【動画カット】車椅子彼氏さんの前に、スロープのない階段…どう移動? 彼女さん「私にお任せください」

■「今しかできないことを全力でやりたい」 車椅子の彼氏をおんぶする彼女の想い

 彼氏の車椅子を押すのは私だけ(@hennahitoooo_)というアカウントで、日常を配信しているお2人。7年前に脊髄損傷で車椅子となった彼氏さん、体育大学出身で体力自慢の彼女さんとの微笑ましいやりとりが魅力で、「車椅子でも手をつないで歩ける」「一緒に人力車に乗れる」と2人で様々なことに挑戦。周囲の協力を得ながらできること・できないことの現状をポジティブに発信していて、「2人の人柄が善意を呼ぶのだろう」「これからも2人の生活を楽しんでほしい」と温かい声が寄せられています。

――付き合ってどのくらいが経つのですか?

【彼女さん&彼氏さん】付き合って1年弱になります。出会いはマッチングアプリで、マッチしてからすごく楽しいやり取りが4ヵ月程続き、実際に会うことになりました。そこでお互いに一目惚れをし、何回かデートを重ね、出会って2週間後に付き合い始めました。

――展望デッキに行くためにスロープのない階段を移動しなければならなくなった時、体力自慢の彼女さんが彼氏さんをおんぶして階段を上がる動画は174万回再生されて様々な反響があがっていました。どう感じていますか?

【彼氏さん】まさかこんなに反響があるとは思わず、驚きと嬉しさが一番でした。多くの人が彼女のことを「かっこいい」「すごい」「感動した」と言ってくださってとても嬉しかったです! 同時に、日々たくさんのことで助けられていると改めて気づきました。より一層感謝の気持ちと大好きな気持ちが大きくなりましたし、彼女とならどんなことも一緒に乗り越えていけると感じました。

【彼女さん】このおんぶの動画は思い出のつもりであげたので、まさかこんなに多くの人に見てもらえるとは思っていなかったため、嬉しい気持ちがほとんどです。ただ、中には悪いコメント(もう消されているけれど)もあり、複雑な気持ちもありました。

――確かにそうですね。「若い今だからできる」というコメントも見られましたが、どう受け止めましたか?

【彼氏】年老いたらできなくなるのは自分たちもわかっていて、だからこそ今できることを全力で楽しんでいるという気持ちです。年老いたらそのときにできることを全力で楽しむつもりですし、老いたからこそできることもあるだろうし、未来も大事だけど今を大切にするべきだと感じました。

【彼女】その通りだと思うし、重々承知もしています。逆に、若い今だからこそおんぶやお姫様だっこができるので、今しかできないことを全力でやりたいし、おんぶしていろいろなところを周ることを楽しんでいます。歳を取ったら取ったで、そのときはヘルパーさんに頼んだり、バリアフリー完備の施設に遊びに行ったり、年相応のことをするようにします。

■「車椅子ユーザーとの暮らし、困り事や壁がどのようなものかを知ってもらえる機会になれば」

――お2人はどういった場面で、お互いの存在をより強く認識しますか?

【彼氏さん】自分は歩くことも難しく車椅子なので、物理的に困難なことに当たるときがあります。そんなときに彼女は率先して車椅子を押してくれたり、段差を上げてくれたり、上にあるものを取ってくれたりとたくさん助けてくれます。さらに、旅行に行く際などは、車椅子でも一緒に楽しめるようなプランを楽しそうに計画してくれるので、日常の中で支えられていると感じる場面がたくさんあります。

【彼女さん】私は彼に心を支えられています。辛いことがあったときや仕事の繁忙期で疲れが溜まっているときなどに、家事を変わってくれたり甘いものを買ってくれたりと些細なことから大きなことまでいろいろと支えてもらっています。あと、私は背が高く、買い物で何かを探しているときに陳列棚の下のほうを見落としてしまいます。逆に、彼は上の方を見ることができません。そういうときに上と下の担当を決めながら探せるので、探し物が見つかりやすくていいコンビだなと感じます。

――彼氏さんは、おんぶしてくれる彼女さんの行動や背中を見て、どのようなことを感じますか?

【彼氏さん】すっごく頼りになるし安定感もあって、いつも安心して乗っかっていますし、くっつくこともできるからめちゃくちゃ嬉しいといつも思っています(笑)。あと、いつもより高い景色が見られて、おんぶされている間は彼女と一緒の目線で楽しめるので、そこも嬉しいです。

――「彼氏の車いすを押すのは私だけ」というアカウント名にも覚悟を感じます。なぜこのアカウント名にしたのですか?

【彼女さん】インパクトのある名前にしたいと思い、遊び心半分、覚悟というよりは「私以外には押させない」みたいな独占心半分でこの名前にしました。発信していくことで、車椅子ユーザーとの暮らしがどんなものか、車椅子ユーザーの困り事や壁がどのようなものかを知ってもらえる機会になればいいなと思っています。

――24年4月から「合理的配慮」が義務化されましたが、実際は環境の整備もままならない部分も。ご自身ができること、周囲のサポートも踏まえて、どういった考え方が必要だと感じますか?

【彼氏さん】感謝の気持ちを忘れないことが一番必要だと思います。サポートしてもらえるのが当たり前、配慮してもらえるのが当たり前なんて考えは絶対にダメだと思います。障がい者も健常者も、お互いに思いやりを持てれば、みんなが過ごしやすいバリアフリーな社会が実現できるのかなと思います。

【彼女さん】やってもらって当たり前と思わないこと、サポートを受けたらしっかりと感謝する気持ちを持つことが大切だと思います。「合理的配慮の義務化」についての動画やポストはよく見かけますが、批判的なコメントも多く見られます。「合理的配慮については対話が必要」と内閣府のリーフレットにも書いてあるため、まずは話し合うことが大切だと思います。もちろん言い方の問題はありますが、障がい者の方はなんでもかんでもやれと言っているわけではなく、こうなってくれたらいいなという気持ちもあると思うので、事業者やほかの方も否定から入らずにまずは話し合いをし、お互いの理解を深めることが必要だと思います。

――今後はどのような関係性になっていきたいですか?

【彼氏】一生一緒に添い遂げる関係性になっていきたいです! 楽しいことや幸せなことは2人で分かち合い、壁や困難は2人で一緒に乗り越えていく。そんな未来を描いています。

【彼女】医療の研究が進み、神経の修復が可能になり、彼がもう一度歩けるようになったらそれはとても嬉しいです。治らず車椅子生活が続いたとしても、今と変わらず仲良しで、健康第一で、平和な日常を過ごしていけたらいいです。

【動画】「私の背中は大きいだろ」おんぶで移動する彼氏&彼女さん
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(2024年04月28日 10時00分 更新)

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