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公務員ピアニスト

 津山市出身で兵庫県西宮市こども未来部長の谷口博章さん(53)は「公務員ピアニスト」として活躍する。仕事の傍ら演奏活動に取り組み、国際コンクールで優勝した経験もある実力派だ▼近年は被災地支援のチャリティー演奏会に力を入れる。2011年の東日本大震災の直後、西宮市の派遣職員として宮城県南三陸町に出向いたのがきっかけとなった▼2週間の業務を終えて町を離れる際、ピアノのあった避難所で演奏を披露した。「音楽で何もせずに帰ると後悔する」との思いからだ。その後も町を訪ねてピアノを弾いたほか、国内外で演奏会を重ね、収益などを町に寄付している▼取り組みはさらに広がりつつある。この28日に台湾で開く演奏会は、能登半島地震の被災地支援が目的だ。台湾には、はり治療で定期的に訪れており、現地の友人の妹が嫁ぎ先の石川県輪島市で被災し輪島塗の存続支援を呼びかけていると知った▼近くリリースするCDは売り上げを南三陸町と能登地方の支援に充てるつもりだ。ドビュッシー「夢」、同じく夢を意味するシューマン「トロイメライ」などを弾き「前に進もう」とのメッセージを込める▼音源は津山で昨年開いたリサイタルのライブ録音である。「社会貢献できる演奏家でありたい」と話す谷口さん。故郷で紡いだ音色が姿を変えて被災地に届く。

(2024年04月25日 08時00分 更新)

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