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保護司制度 持続へ踏み込んだ対策を

 罪を犯した人の立ち直りを支援する保護司が減っていることを受け、なり手確保策を議論してきた法務省の有識者検討会が中間取りまとめを公表した。新任を原則66歳以下に限るとしている年齢制限を2025年度にも撤廃することなどを盛り込んだ。今年10月にも報告書をまとめ、法務省が保護司法改正など必要な手続きを進める方針だ。

 保護司は、刑務所から仮釈放された人や保護観察中の少年らと定期的に面会し、生活や仕事の相談に乗ったり、地域社会に溶け込めるよう関係者との調整に当たったりするボランティアで、法相が委嘱する。罪を犯した人の更生を支援する大事な役割を担っており、再犯防止や安全な地域づくりに欠かせない。持続可能な制度を目指し、有識者検討会はさらに議論を深め、踏み込んだ対策を打ち出してもらいたい。

 法務省によると、全国の保護司は近年減少傾向で、23年1月時点では約4万5600人(特例で再任した70代後半を除く)=グラフ。全体の約8割が60歳以上と高齢化も進んでおり、制度の持続が難しいとの指摘がある。岡山県内では現在937人が活動。特例による再任を除けば減少傾向が続いている。

 年齢制限について、中間取りまとめは、企業などで定年延長や再雇用が広がっていることを踏まえ、現行の66歳以下の条件では「リタイアした後の地域貢献を望む人を取り込めない」として、年齢制限をなくすとした。

 適任者を探すため、現在は保護司個人の人脈に頼ったり、地域の各種団体から人材情報を集めたりすることで行われている。ただ、人間関係の希薄化などから、こうした形での人材確保は難しくなっている。中間取りまとめでは、24年度中に公募制を試行的に導入し、幅広い層の受け入れを目指すことにした。

 公募制により、保護司の活動に関心や意欲のある人を掘り起こし、門戸を広げる意義は大きいと言える。保護司の活動を体験するインターンシップや、活動を紹介するセミナーを活用しながら、なり手確保につなげてほしい。

 検討会では今後、報酬制導入の適否などについて協議を続ける。現在は無給で、交通費など活動にかかった実費だけが支払われている。これまでの議論では、報酬制は人材確保に有効との見方がある一方で「無報酬だからこそ、支援対象者や家族が心を許してくれている」といった慎重意見もある。報酬制を導入すれば活動にどんな影響が及ぶのか、十分に見極めながら検討することが求められる。

(2024年04月21日 08時00分 更新)

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