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森林環境譲与税 森の機能持続へ活用探れ

 森林保全を目的に国から自治体に配られる「森林環境譲与税」が本年度から増額となる。全国合計で2023年度より100億円多い600億円の予定だ。有効に活用し、土砂災害や地球温暖化の防止など多様な機能を持つ森林を未来に引き継いでいきたい。

 森林環境譲与税は19年度に導入され、同年度の計200億円から段階的に増やされてきた。財源はこれまで全額を国が工面していたが、本年度からは本来の原資である「森林環境税」の徴収が始まり、制度が本格化する。森林環境税は1人年間千円で、住民税に上乗せされる。

 一方、譲与税は年2回、各自治体に配られる。総務省の集計によると、岡山県内への配分は23年度に計9億8632万円。県が1億1835万円だったほか、市町村では新見市、真庭市、岡山市が上位を占めた=表

 配分額は私有の人工林面積、人口、林業就業者数に応じて決まるが、これまで人口の多い都市部が手厚くなる傾向があり、全国町村会などが見直しを求めていた。そこで国は本年度、総額の30%を占めていた人口比例分を25%に引き下げる一方、人工林面積分を50%から55%に引き上げた。多くの森林を抱え、荒廃防止の最前線に立つ山間部への配慮は当然だろう。

 新見市は本年度、約1億8200万円の譲与税を見込む。前年度より4400万円近く増えており、うち約1200万円は配分方法の見直しに伴うものだという。伐採期を迎えた人工林の再造林奨励金事業などを新たに始める。

 林業の担い手不足解消も大きな課題だ。美咲町は譲与税を活用し、一日林業体験や林業実務研修会を開いている。参加をきっかけに町内で林業に就いた人もいる。

 森林を手入れし、維持していくためには、伐採した木材の消費も欠かせない。真庭市は真庭産木材を一定量以上使った新築木造住宅に譲与税で助成している。岡山市は譲与税の使途の86・7%(22年度分)を公共施設の木造・木質化事業が占める。放課後児童クラブの新改築などで積極的に取り入れている。

 譲与税を巡っては、人口が多く、森林が少ない自治体では使い道が決まらない場合もある。倉敷市は例年、基金への積立額が多く、残高は22年度末で1億4千万円を超える。市は「学校園の整備など、将来の需要に備えたい」とする。貴重な財源であり、森林保全につながる施策にしっかりと生かしてもらいたい。

(2024年04月20日 08時00分 更新)

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