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食品ロスの削減 多様なつながりで促進を

 食品の高騰が続き、世界的な食料危機も迫る中で日本では、まだ食べられる食品が大量に廃棄されている。「食品ロス」の削減は急務だ。

 削減へ向けて地域で何ができるか、先日の本紙シンポジウムで探った。副題は「もったいないをおいしいへ」。従来捨てていた食品をおいしく食べるため、多様な主体による取り組みが報告された。

 日本の食品ロス量(2021年度523万トン)のうち食品製造や小売りなどの事業系が半分余りを占める=グラフ。課題の一つとして指摘されたのが、寄付した食品で食中毒などが発生した場合の責任問題だ。岡山、広島県内でも団体間の連携が進み、食品スーパーや製造会社などで売れ残ったり余剰となったりした商品を、フードバンクや福祉施設に寄付する取り組みは広がってきている。ただ、事業者が法的責任を問われるのを懸念して、寄付をせずに廃棄するケースもまだ多い。

 消費者庁などは昨年、米国などのような事業者の責任を問わない法的措置を検討してきたが、取りあえず見送り、寄付された食品の信頼醸成などを図ることにした。法的措置は引き続き検討されることになっており、シンポでは実現への期待感が示された。

 消費・賞味期限間近の食品を安く販売する専門店について、岡山市内の店舗の店長が仕組みなどを説明した。こうした店は相次いで誕生しており、うまく利用すればいい。

 大きさや色、形が悪いために廃棄される規格外の農作物も大量にあり、問題だ。真庭市の企業は、地元農家の「もったいない」との声を受け、カット野菜にして販売を始めて利用を伸ばしている。高齢女性らが加工し、所得向上や生きがい創出にもつながる。また、規格外の桃や野菜を使ったジェラート、スープを商品化する高校生らの活動も報告された。さまざまな工夫で活用を進めていきたい。

 家庭系も食品ロス全体の半分近くあるだけに、日常生活での心がけが必要だ。野菜ソムリエは、野菜や果物の皮などに栄養が多いとして、むかずに食べることなどを提案した。作りすぎず必要な分だけ購入することも推奨した。

 カット野菜の販売ルート開拓を食品スーパー関係者が支援するといった、相互の連携も話し合われた。食品ロスに関わる各分野の当事者がつながり協力するとともに、採算がとれる事業にして持続・発展させていくことも重要だ。

(2024年04月17日 08時00分 更新)

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