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「おらがチーム」

 この時季のことだろう。〈おらが世やそこらの草も餅になる〉小林一茶。そこらに生える草でさえ草餅になる、私が生きる今は結構な時代であるという。着眼点が面白い▼「おら」は一茶の句にしばしば登場する。江戸の町で男女を問わず使うようになり、大衆化の時代を謳(おう)歌(か)する言葉に変わった。冒頭の句を権力者が詠んだら鼻もちならないが、一市民が“幸福”をかみしめている句である。俳人の長谷川櫂さんが自著「小林一茶」でそう解説している▼退潮の時期を経たものの、市民が「おらがチーム」を応援するムードは失われていない。美作市の美作ラグビーサッカー場で7日、サッカー女子・なでしこリーグ2部の岡山湯郷ベルの試合を観戦し感じた▼結果は6―0の圧勝だった。ドリブル、コーナーキックからの鮮やかなゴールや、エースのロングシュートが決まり、観客席を大いに沸かせた▼これで開幕4連勝。この間、16得点を挙げ、失点はわずか1。12チームの首位に立ち、快進撃を見せている。同じリーグの吉備国大シャルムも同日、快勝し、5位に浮上した。14日、湯郷ベルは美作で、シャルムは倉敷市の倉敷運動公園陸上競技場で試合がある▼リーグは10月まで22試合を戦う長丁場だ。市民の声援が「おらがチーム」を後押しし、この幸福をかみしめ続けられるように祈る。

(2024年04月10日 08時00分 更新)

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