山陽新聞デジタル|さんデジ

卒業の桜、入学の桜

 満を持しての週末だったに違いない。花見日和の岡山市内で、本格的な記念撮影をしている家族をたくさん見掛けた。主役はランドセル姿の新1年生や卒業証書を手にした子どもたち▼開花時期が年々早まっているからか、近頃は桜といえば「入学」より「卒業」を連想する若い人は多いという。いずれにせよ、別れと出会いの季節を彩り、心を揺らす花である▼今年は開花まで雨にじらされ、その後はあっという間に一面が淡紅一色に埋まった。咲けば咲いたで次はいつ散るかと天候にやきもきさせられる。うまい具合に式典当日に満開といけば御の字か▼日本の桜の8割を占めるとされるソメイヨシノは全て、1本の木から増やしたクローンだ。原木候補は東京・上野公園にあり、江戸から明治にかけて接ぎ木で津々浦々に広まったとか。同じ遺伝子だから一斉に咲き、一気に散る▼春の訪れが例年より早いかどうかも観測しやすい。そうして得たデータを基に、温暖化が進めば開花時期はさらに前倒しになると予想されている。地域によっては花芽を休眠から目覚めさせるための冬の寒さが足らず、花が咲かなかったり、咲いても満開にならなかったりする可能性も指摘される▼希望を抱いて新生活に踏み出す子らにはピンクの桜がよく似合う。未来もずっと、咲き誇る花の下で春を迎えたい。

(2024年04月09日 08時00分 更新)

あなたにおすすめ

ページトップへ