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虎に翼

 今月始まったNHK連続テレビ小説「虎に翼」に第1週から引き込まれた。昭和の初め、女学校の卒業を控えた主人公の寅子(ともこ)はたまたま訪ねた大学で、聞こえてきた「女性は無能力者」という言葉に驚く▼教室で行われていたのは、明治時代に制定された民法の講義だった。女性は結婚すると法律上、無能力者とされ、妻の財産は夫が管理し、妻が働く場合は夫の許可が必要だった。「はぁ?」。寅子でなくても大きな声を上げたくなる▼あまりに男尊女卑な明治民法は後に改められる。第2次世界大戦後、男女平等を定めた憲法が制定された。ただ、法律が変わり、進学も就職も制限されなくなったものの、社会のあちらこちらに性別による役割分担の意識は残る▼「平成の時代にも、女はそんなに勉強しなくていいと言われた」「寅子が直面する問題は令和の時代にも存在する」…。SNS(交流サイト)では主人公に自身を重ねる女性たちの投稿も目立つ▼寅子のモデルとされるのは日本初の女性弁護士の一人、三淵嘉(みぶち・よしこ)子さん(1914~84年)。司法の分野で道なき道を切り開いた人である。今年で没後40年になる▼ドラマの中の寅子の口癖は「はて?」。疑問を感じたら立ち止まり、「なぜ?」「どうして?」と問いかける。誰かが声を上げれば社会は変わる。これまでも、これからも。

(2024年04月07日 08時00分 更新)

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