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相次ぐ三十数年ぶり

 「一」の字に縦線を1本引くと「十」になる。縦線2本の「廿」は20、3本の「世」は30を表す。人間はおよそ30年で親から子へと代が替わる。世という文字には世代や、時代の区切りといった意味もある▼このところ、経済指標で「三十数年ぶり」が相次いでいる。日経平均株価は34年ぶりに史上最高値を更新し、先月には一時4万1千円を超えた。円相場は先週、1ドル=152円に迫り、34年ぶりの円安水準となった▼同じく先週発表された公示地価では、地方において、上昇した地点の割合が下降地点を32年ぶりに上回った。今年の春闘は大手企業を中心に高水準の賃上げ回答が目立ち、33年ぶりに5%台となる可能性がある▼三十数年前はバブルの時代だった。その後、株価や地価が暴落して日本経済は長い停滞期に入った。企業が採用や賃金を抑えたことで景気はますます悪化。技術革新が滞り、国際競争力の低下を招いたとされる。この時期を社会人として過ごした世代には耳の痛い指摘だ▼一方で、成長の機会を求めて海外に進出した企業は、この30年で大きく増えた。1990年代に商用化されたインターネットを活用し、成功した例も多い。日本企業は厳しい環境下で活路を探ってきた、とも言える▼バブル崩壊から今日に至る「失われた30年」。このあたりで一区切りとしたい。

(2024年04月04日 08時00分 更新)

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