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やっと寝られる

 「やっと元の睡眠時間を取り戻せるようになりました」―。2018年の西日本豪雨の水害で甚大な被害を受けた倉敷市真備町地区の片岡奈津子さん(48)が言う▼運営する訪問看護ステーションと自宅が全壊したが、すぐに事業を再開して在宅避難者を支援し、被災体験や防災を語り合う場づくりなどにも取り組んできた。地区外での「みなし仮設」住宅の生活を経て2年前に自宅を再建した▼被災から続いた慌ただしい日々。水が来る夢を見たり、突然目が覚めたりする。相次ぐ各地の水害や地震被害にも心がざわつき、映像を見るとしんどくなる。2、3時間しか眠れなかったりしたという▼町が壊滅して6年近く。建物や施設は再建が進み、すっかり復興したように見える。だが、被災者が心穏やかになるには、もっともっと長い時間が必要なのだろう▼真備町は今、一つの節目を迎えた。水害を起こした小田川の付け替えが完工。高梁川との合流を低い位置に替え、水が流れやすくし洪水になりにくくした。10年かかる予定を5年に短縮し、安全性向上を急いだ▼工事を担った国土交通省の事務所は3月末で閉じられた。前所長の桝谷有吾さんが本紙へ寄稿した言葉が印象深い。「憂い無ければ備え無し」。なお慢心することなく次の厄難に備える。災害列島のどこでも不可欠な金言だろう。

(2024年04月02日 08時00分 更新)

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