山陽新聞デジタル|さんデジ

エープリルフール

 きょう創刊20年を迎える「虚構新聞」は架空のニュースを発信する個人のウェブサイトだ。風刺でにやりとさせるネタを、これまで千本以上掲載している▼「最優秀喜劇賞に『国会審議』 全日本喜劇アカデミー発表」は先月の記事。国会議員が台本を棒読みする、同じせりふを何度も繰り返す、といった非常に高レベルの茶番劇で、観客は笑うしかない―と皮肉った▼エープリルフールである。欧米の報道機関はよく本当のような作り話で読者らを楽しませるが、もっともらし過ぎて惑わされる人が続出し「冗談にならない」と、お叱りを受けることもままあるらしい▼うそから出たまこととなった例も少なくない。英紙が「エリザベス女王がホームページを開設」のうそ記事を載せた時は、1年足らずで実現してしまった。「虚」と「実」の境目は思う以上にぼんやりしている▼ただ、うそと聞けばジョークではなくフェイクを連想してしまうのが今のご時世。能登半島地震の折も偽情報がばらまかれ、被災地を混乱させた。実際に放送されたニュース動画を加工するなど手口も巧妙化の一途という。何が正しいかを判断する力がますます必要な時代だ▼もっとも、年に1日くらいは親しい間柄でかついだり、かつがれたりして笑い合う気持ちの余裕は持っていたい。上品なうそを心掛けつつ…。

(2024年04月01日 08時00分 更新)

あなたにおすすめ

ページトップへ