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同性婚訴訟 「違憲」是正へ議論が必要

 同性婚を認めない民法と戸籍法の規定が憲法違反かどうかが争われた一連の訴訟で、初の高裁判断となった札幌高裁が今月、「違憲」とする判断を下した。

 同種の訴訟は2019年から同性カップルらが全国の5地裁で計6件起こした。今月までに出そろった地裁判決は「違憲」が2件、「違憲状態」が3件、「合憲」は1件だった。合憲の1件も「将来的に違憲となる可能性がある」と指摘している。

 性的多様性を尊重する司法の流れは、より鮮明になっているといえるだろう。おとといは犯罪被害者給付金を巡る訴訟で、最高裁が支給対象に同性パートナーも該当し得るとの初めての判断を示した。

 同性婚が認められていないことについて、札幌高裁は法の下の平等を定めた憲法14条1項、婚姻の自由を定めた24条1項、個人の尊厳に立脚した立法を求めた同2項のいずれにも違反すると断じた。憲法の制定当時、同性間の婚姻は想定されていなかったものの、社会の変化に伴い、「個人の尊重がより明確に認識されるようになったとの背景のもとで解釈することが相当」との見解を示した。

 400近い自治体で同性カップルを公的に認定するパートナーシップ制度の導入が進んでいるものの、法的効力に限界があることも指摘した。

 同性カップルは、異性間の婚姻では認められる税の優遇措置を受けられないなどの不利益がある。高裁判決はそうした日常生活の不利益だけでなく、同性愛者がアイデンティティーの喪失感を抱き、人格が損なわれる事態となっていることにも言及している。

 さらに「付言」として、同性婚に対しては国民の間に反対意見があることも踏まえた上で、この問題は国民の意見統一を求めるものではなく、個人の尊厳に関わる喫緊の課題だと指摘。早急な対策が必要として、立法府に真摯(しんし)な議論と対応を求めた。

 札幌高裁の判決を受け、連立政権を組む公明党は同性婚を容認する法整備に前向きな考えを示した。一方、岸田文雄首相は「引き続き(同種訴訟の)判断を注視したい」と述べるにとどまり、自ら議論を主導する姿勢は見えない。

 世界では30を超える国や地域が同性婚を認め、先進7カ国(G7)で同性カップルの法的保障がないのは日本だけだ。昨年5月、広島市で開かれたG7サミットでは「性自認や性的指向に関係なく差別のない人生を享受できる社会を実現する」との首脳声明が採択された。議長を務めたのは岸田首相である。

 今後、各地で控訴審判決が続き、いずれ最高裁が統一判断を示すとみられるが、相当の年数を要するだろう。性的少数者の人権を尊重する司法の流れが強まる中、現状をこれ以上放置することは許されなくなっている。政府や国会は早急に同性婚の法制化に向けた議論を始めるべきだ。

(2024年03月28日 08時00分 更新)

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