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小川さん「老いを考える舞台に」 3月ハレノワでの演劇に初挑戦

老人ハイスクールの稽古に臨む小川さん(左)
老人ハイスクールの稽古に臨む小川さん(左)
 岡山県を拠点に老いをテーマに活動する劇団と岡山芸術創造劇場ハレノワ(岡山市北区表町)が連携し、3月3日に同劇場で上演する演劇に、団体役員小川隆正さん(69)=同市南区=が市民俳優として出演する。廃校を活用した施設で暮らす高齢者たちの「青春」を描く物語に、介護事業に携わった経験を重ね合わせ「老いとは何かを考えられる舞台に」と古希を前に初の演劇に挑む。

 物語「老人ハイスクール」は、劇団「OiBokkeShi(オイボッケシ)」を主宰する菅原直樹さん=岡山県奈義町=が脚本、演出を手がけ、ハレノワとの連携プロジェクト「老いのプレーパーク」用にアレンジした。公募の10人(40~70代)が認知症の高齢者や職員を演じ、それぞれが生徒や教師らになりきる設定。教室を舞台に起こるトラブルから人間関係や背景が浮かび上がる内容だ。

 会社勤めを経て、現在は福武教育文化振興財団(同市)の常任理事を務める小川さん。仕事がら、市民参加の文化発信を目指すハレノワの活動に興味が湧き、ピアノに親しむ「表現好き」もあって市民俳優に応募した。教室で生徒を遠巻きに見守る保護者役になった「ササキ」を演じる。

 38歳から十数年間、介護事業に従事。「役割や生きがいがある高齢者は輝いていた」といい、認知症になっても歩んだ人生や尊厳が大切にされるケアの重要性を実感した。一方で意欲はあっても、人手不足などで高齢者とじっくり向き合えない職員がいる現実も知るだけに「物語は老いや介護を見つめ直す契機になる」と考える。

 多忙な日々が一段落して挑んだ演劇の世界は「新しい仲間や価値観に触れられ、刺激的だ」とし、「ササキ」の境遇に少し似た自分なりの表現ができないか思いを巡らせる。菅原さんの新作「いざゆかん」とともに上演される当日のチケットは完売。「後悔することなく楽しみながら年を重ねたいと飛び込んだ。老いとは何かを突き詰めたい」と話す。

 山陽新聞社は、地域の魅力創出や課題解決を図る「吉備の環(わ)アクション」を展開し、劇団とハレノワの連携による取り組みを支援している。

(2024年02月24日 21時01分 更新)

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