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介護施設での虐待 岡山県も最多 対策検証を

 特別養護老人ホームや有料老人ホームなど専門的なケアを提供するための介護施設で、職員による高齢者への虐待が後を絶たない。

 厚生労働省の調査によると、2022年度は前年度比15・8%増の856件に上り、21年度に続いて過去最多を更新した。計1406人が被害に遭い、8人が亡くなった。市町村への相談・通報も過去最多の2795件だった。

 社会的な意識の高まりも相談などが増えた背景にはあろう。だが、件数は氷山の一角との指摘もある。虐待は高齢者の尊厳を傷つける行為であり、決して許されない。対策が急がれる。

 複数回答で最も多いのは暴力や拘束といった身体的虐待で、57・6%を占め、暴言などの心理的虐待が33・0%、長時間放置などの介護放棄が23・2%だった。被害が確認された4人に3人は要介護3以上の人だった。日常生活のほぼ全てに手助けが必要で、認知症などでコミュニケーションが難しい人も多い。

 虐待の要因(複数回答)は、経験や知識不足による「教育・知識・介護技術等の問題」が最多の56・1%で、「職員のストレスや感情コントロールの問題」(23・0%)が続いた。

 いずれも簡単に克服できることではない。虐待が認められた介護施設のうちの21・3%は、過去にも虐待が起きていた。職員個人に加え、事業所の責任は看過できない。指導する自治体や国も重く受け止めねばならない。

 岡山県内の介護施設職員による虐待は14件で、やはり過去最多となった=グラフ。本年度も虐待が確認されるケースは続いている。例えば、倉敷市のグループホームは、職員が朝食に集まるのが遅れた女性を強い口調で叱責(しっせき)するなど不適切な言動があったとして、新規利用の受け入れを停止する処分を受けた。

 介護現場は深刻な人手不足で、過度な業務負担やストレスが影響している恐れがある。厚労省は、事業所に支払う介護報酬の24年度からの改定方針を先月決め、職員の賃上げを図ることにした。

 併せて、業務の効率化に向けて、介護ロボットや情報通信技術(ICT)機器の活用を促す。一方で、24年度に義務化される虐待防止のための委員会設置や指針の整備などの措置をとらない事業者には報酬を減額するなどの対応を講じる方針である。

 とはいえ、虐待を防ぐことができるのか懸念は拭えない。国や自治体はこれまでの対策も検証し、施設の取り組みを後押ししてもらいたい。

(2024年02月14日 08時00分 更新)

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