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空き家と移住対策 関係者の信頼構築が鍵だ

 山陽新聞社など地方新聞47紙と共同通信が地域活性化の取り組みを応援する「地域再生大賞」の中国・四国ブロック賞に、真庭市美甘地域の住民団体「グランパ美甘」と「くらしサポート黒田」が選ばれた。両団体は協力し、空き家管理と移住者の入居支援、高齢者の生活支援を一体的に行う。空き家への移住を増やすなどの成果を上げていることが評価された形だ。

 美甘地域は中国山地沿いにあり、人口は約千人。過疎高齢化が進み、高齢化率は約55%と高く、空き家も多い。

 空き家管理では、メンバーが主体となって地域の空き家全117軒の状態を把握し、再利用の可能性などを評価した。家主から請け負って換気や清掃をし、家屋の状態をチェックして報告する。草刈りや除雪、建物の修繕、片付けにも応じる。

 移住者に対しては、トータルに入居を支援。空き家に入る移住者の負担軽減のために引っ越しや床・天井の張り替えなどをできるだけ手伝う。仕事や子育てのアドバイスをはじめ、住民との橋渡しなど地域に溶け込めるよう生活全般の相談に乗っている。

 高齢者生活支援では、買い物や通院の送迎サービスに加え、庭の草刈りや電球の交換、掃除といった身の回りのサポートを有償で行う。

 これらの活動では、家主、移住者、高齢者と“顔の見える関係”をつくり、共助の仕組みを地域に根付かせてきた、と言えよう。

 肝心なのは、これらが別々ではなくリンクしていることだ。日ごろから生活支援で利用者と信頼関係を築くことで、空き家になった際に管理を託してもらえるようになる。速やかに対応できるよう、あらかじめ住民や相続人らと面談も行うという。そうして空き家に移住者を受け入れ、継続して生活を支援し定住につなげる。2016年の活動開始からこれまでに東京や群馬、京都などから計9件(14人)の移住を実現している。

 空き家を登録して入居希望者につなぐ「空き家バンク」を行政が設けるだけでは、うまく機能しないケースもまま見られる。住民主体で、生活支援から信頼構築につなげる美甘方式は参考になろう。

 住民による空き家の実態把握も重要な点だ。真庭市は外部のコンサルタントに委託して全市域の空き家調査をしようと関係予算も計上したが、美甘の活動を参考に地元住民に委ねる方法に転換した。

 空き家になって放置すると劣化が進みやすい。早く入居につなげるという点でも、美甘方式は意味があろう。

(2024年02月12日 08時00分 更新)

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