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校庭に自慢のローラースケート場 岡山・角山小、全国唯一?の存在

笑顔を見せて滑る児童たち
笑顔を見せて滑る児童たち
角山小の校庭にあるローラースケート場
角山小の校庭にあるローラースケート場
 全国の小学校で唯一とされるローラースケート場が、岡山市立角山小(同市東区才崎)の校庭にある。土足禁止の“聖域”として扱われていた時期もあったほど地域で愛されてきた存在らしい。保護者や住民を招いて児童が演技を披露する恒例のローラースケート大会が1日に開かれた。70年近く続く行事と聞き、珍しさに引かれてのぞいてみた。

 脚をクロスさせながらスピーディーにコーナーを曲がったり、勢いよくターンを決めたり…。全校児童40人が次々と技を繰り出すと、寒風が吹き付ける校庭に歓声と拍手が鳴り響いた。6年男子(12)が「練習した技が決まってうれしい。学校で一番楽しい時間」と笑顔を見せる。

 児童と一緒に演目に登場した保護者がいた。「子どもたちに伝統を引き継ぎたい」と昨年から大会前の練習で滑り方を教えている卒業生の池本幸彦さん(38)=同市東区=だ。小学生時代は全員がスケート靴を持ち、休み時間や放課後に遊んでいたそう。「昔は靴を脱ぎ、一礼して入るくらい神聖な場所。ボールが転がって入ったら先生に叱られていた」と振り返る。

 ローラースケート場はコンクリート製で約200平方メートルの長方形。同小PTAが1956年に整備した記録が残るが、造られた経緯は定かではない。当時、父が左官作業を手がけたという角山学区連合町内会の西方立夫会長(79)=同市東区=が「工期は冬場。保護者がセメントが固まらないようたき火で暖を取りながら夜通し頑張っていた」と教えてくれた。

 せっかくの施設だが、現在は安全面を考慮し通常は開放していない。それでも、大会は毎年続け、事前の体育授業で児童は基本的な技術を身に付ける。大会や指導にはPTAも協力している。

 「卒業生にとっては自慢の場所。伝統をつなげるため、指導する仲間も増やしていきたい」とPTA会長を務めたこともある池本さん。西方会長も「住民のほとんどがローラースケート経験がある学区は角山以外にない。地域のシンボルとしてこれからも守っていく」と力を込める。

 きらきらした目で滑る児童と地元に誇りを持つ住民。ローラースケート場は単なる珍しい風景ではなく、世代を超えて地域をつないでいる。その存在感は年を重ねるごとに増しているのかもしれない。

(2023年12月09日 17時36分 更新)

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