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地方議会改革 ハラスメント根絶を競え

 民間企業では当たり前となっているルールや相談体制も整備されていないようでは政治家のなり手も集まるまい。地方議会は立ち遅れた状況を改革しなければならない。

 47都道府県議会を対象にしたハラスメント(嫌がらせ)防止に関する共同通信の調査で、相談窓口の設置や議員向けの研修といった議会独自の取り組みを実施しているのは約3割に当たる15議会にとどまった。岡山、広島県議会では実施していない。

 調査は昨年11月1日時点の実施状況をまとめ、先日公表された。独自の取り組みのうち、具体的な内容(複数回答)は「議会独自に研修を実施」が8議会、「議会に相談窓口を設置」が4議会、条例や要綱による「倫理規定の整備」が2議会―などとなっている。ほとんどの議会は昨年9月に全国都道府県議会議長会が初めて開いた研修会の参加や周知だけだった。

 2021年に改正された政治分野の男女共同参画推進法では、ハラスメントの防止策を国や地方自治体に求める条文を設け、推進主体として新たに地方議会を明記した。岡山県内の全15市議会を調べても、一部で研修を実施している程度だ。地方議会の対応は積極性を欠いていると言わざるを得ない。

 政治活動を巡るハラスメントは深刻だ。地方議員の4割超が同僚や有権者から何らかのハラスメントを受けたと回答した国の調査がある。内閣府が昨年、被害体験を基に作成した研修教材の動画には、少子化対策を質問する女性議員が「まずは自分が子供を産んだら」とやじを飛ばされたり、若手議員が「黙れ、若造」と罵声を浴びせられたりする様子が再現されている。

 地方議会は性別や年齢の構成がいびつとなっている。国の資料によると、議員の8割超は男性だ。年齢層は、60歳以上の割合が都道府県議で43%、市区議で57%、町村議では77%に上る。近年は在職期間が長くなり、高年齢化の傾向にあるという。多様な民意を政治に反映するには女性や若者の参画が不可欠で、ハラスメント対策は政界進出を後押しする一歩にもなろう。

 昨年6月に都道府県で初めてハラスメント根絶条例を定めた福岡県議会では、弁護士ら専門家をメンバーにした相談窓口を設け、来月に運用を始める。パワハラやセクハラのほか、投票をちらつかせて有権者が候補者に嫌がらせをする「票ハラ」にも対応する。県議だけでなく、県議選の候補者や市町村議会・議員からの相談も受けるそうだ。県内の地方議会が一体となってハラスメントを防ぐモデルケースと言える。

 地方議会にとって、なり手不足の解消は最重要課題の一つだ。31日には法改正後で初となる統一地方選の議員選挙が始まる。候補者や政党は、ハラスメントのない地方議会を実現する方策も競ってもらいたい。

(2023年03月25日 08時00分 更新)

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