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ひきこもりの若者を支える

 「元気でね」。仲間やスタッフが声をかける。ハイタッチし抱き合った。見送られる10代の女性は仲間たちの姿が見えなくなるまで手を振り続けた。ひきこもりを経験した若者の自立を支援するシェアハウス「人おこし」(美作市)から今月初め、1人が巣立っていった▼施設は市の地域おこし協力隊員だった能登大次さん(49)らが8年前に立ち上げた。調理の分担や事業所での就労体験をするが、目的は幸せだと実感してもらい生きていく自信をつけてもらうこと。これまでに全国から90人余りがやってきた▼国は本年度、ひきこもりの人や家族を支援するための自治体向け指針を初めて作成する。ひきこもりは誰にでも起こり得る社会全体の課題と位置づけ、人としての尊厳を守る視点に立つという▼ひきこもりは甘えだとして更生や就労に重点を置いた従来の対応から、本人の意思を尊重した寄り添う支援への転換である。指針には相談後の支援の流れや民間団体との連携などを盛り込む予定だ▼「人おこし」は生きる目標が見つからず悩んだ能登さん自身の体験が原点にある。「さまざまな生きづらさを抱えていても、ちょっとしたきっかけがあれば誰もが羽ばたける」と能登さんは言う▼冒頭の女性は実家で両親を手伝いながら将来を考えるそうだ。どうか焦らずゆっくりと。じっくりと。

(2024年05月07日 08時00分 更新)

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